CLEO-PR 2013 工藤 寛史

الأبحاث

CLEO-PR & OECC/PS 2013 @ KYOTO 学会参加報告書

田邉研究室 修士2年 工藤 寛史

2013年7月4日

2013年6月30日から7月4日にかけて, 京都で行われたCLEO 2013-PR/OECCにて口頭発表を行った.
本報告書では, 今回の学会を通じて感じたことを報告する.

【 観光 】

今回は嵐山・嵯峨野と洛南を中心に観光を行った.まず保津川下りだが, 嵯峨嵐山駅からトロッコとバスを乗り継いで, 40分ほど行ったところから約2時間かけて川を下る.船頭さんの楽しいガイドを聞きながらゆったりと流れていくが, スリリングな急流滑りも体験でき, 非常に面白かった.また, 竹林通りや伏見稲荷をゆっくりと散策し, 日常の喧騒を忘れることができた.時期としては梅雨だったのが, 学会中は天気がよく, 最高の観光日和だった.

【 自らの発表 】

今回の報告では, 多角形共振器の曲率半径がQ値に与える影響について数値解析を中心に報告した.発表自体は前回のCLEO 2013に比べてそれなりにうまくできたと思う.自己採点で70点といったところ.ただ, 自分の報告がセッションの分野と離れていたこともあり, 聴衆の食いつきはあまりよくなかった.今後はセッションをまたいでも, 聴衆に興味を持ってもらえるような面白い研究を報告したいと思う.

工藤 寛史

【 注目した研究(口頭発表編) 】

・Wl1-1 Diamond Nanophotonics and Quantum Optics, Marko Loncar
タイトルから分かるようにダイアモンド構造を用いて, 量子的応用を目指す研究であるが, そのファブリケーション技術がとにかくすごかった.従来シリコンによって作製されていた, リング型共振器や一次元フォトニック結晶をダイアモンドによって達成し, シリカのレーストラック状のリング共振器ではSiO2を表面にクラッドの役割としてかぶせることで, Q=1.25×105という値を達成していた.(SiO2のクラッドがない場合は, Q=3.0×104)また, 近況でQ > 106を達成し, 熱などのノイズの少ない光周波数コムへの応用についても報告していた.

参考資料
・S. Y. Lee et al., “Integrated High Quality Factor Optical Resonators in Diamond,” Nano Letters, DOI: 10.1021/nl3037454 (2013).
・M. J. Burek et al.,”Free-Standing Mechanical and Photonic Nanostructures in Single-Crystal Diamond,” Nano Letters, vol. 12, 6084 (2012).
・MI1-1 Hybrid III-V/SOI Nanophotonics: Lasers, Switches and Memories, F. Raineri et al., SOI(Silicon on Insulator)とはその名の通り, 酸化膜が埋め込まれたSiのことで, IBMが開発した技術であり, LSIの高速通信/低消費電力に大きく貢献した.今回, SOI導波路上に基板上に1.55 umで発光するInGaAsP/InGaSaの量子井戸が埋め込まれた, InP系1次元フォトニック結晶を用いて, レーザやメモリ動作への応用の実験的報告である.III-V族半導体とSOI組み合わせることによって, 1 fJでかつ2 sec以上のメモリ動作を確認した.

参考資料
・Y. Haliouaet al., “Hybrid III-V semiconductor/silicon nanolasers,” Opt. Express 19, 9221-9231 (2011).

・Wl4-1 All-Color Plasmonic Nanolasers with Ultralow Thresholds, Yu-Jung Lu et al.,
一般的に光とプラズモンのカップリングはその三次元での閉じ込めロスが大きいという問題を抱えている.今回用いたエピタキシャルのアプローチではそのロスを大幅に低減できたことによって高効率なプラズモニックレーザの発振が可能となった.デバイスの構造は, InGaN, GaNを用いたロッドナノロッドを薄いシリカ層をはさんで, シリコン基板上のAg基板上に設置することによって, シリカ層にプラズモンを高効率に閉じ込めることができる.また, ナノロッドの形状を制御することによって, レーザの波長を赤~青まで制御することが可能であり, さらに低パワーのCW光で動作が確認された(青色の場合, 10 W/cm2以下).
参考資料
・Y.-J. Lu et al., “Single InGaN nanodisk light emitting diodes as full-color subwavelength light sources,” Appl. Phys. Lett. 98, 233101, 2011.
・Y.-J. Lu et al., “Plasmonic nanolaser using epitaxially grown silver film,” Science, 337, 450–453, 2012.
・Wl4-2 Electrically Pumped Metallo-Dielectric Pedestal Nanolasers, Qing Gu et al.,

・Wl4-2 Electrically Pumped Metallo-Dielectric Pedestal Nanolasers, Qing Gu et al.,
2段階のInPエッチングを行うことによって, 2つのディスク構造を持つナノ共振器を作製する事に成功した.ここで, ディスク部分はInGaAsを用いており, レーザ応用を目指している.上下のディスクの直径を変えてQ値とレーザ発振の閾値を数値解析的に求め, 形状について検討を行っていた.また, 作製した共振器を用いてレーザ発振動作も確認した.

・Wl4-3 Fabrication and Application of a Horizontal Plasmonic Air-Slot Ring Resonator, Jaehak Lee et al.,
2枚のSiNx構造の間にSiO2を挟んだ状態で, エッチングすることによって間に空間を作り, そこにプラズモンを発生させる.Q値は解析的にも実験的もまだ数十らしい.発表の後半は応用先の報告となっており, 共振器表面に抗体を付けることによってシフト量が増える傾向を示した上で, バイオセンシングへの応用が有用だとしていた.

・Wl4-4 Active Plasmon Devices, Kenzo Yamaguchi et al.,
2枚のSiNx構造の間にSiO2を挟んだ状態で, エッチングすることによって間に空間を作り, そこにプラズモンを発生させる.Q値は解析的にも実験的もまだ数十らしい.発表の後半は応用先の報告となっており, 共振器表面に抗体を付けることによってシフト量が増える傾向を示した上で, バイオセンシングへの応用が有用だとしていた.

・Wl4-4 Active Plasmon Devices, Kenzo Yamaguchi et al.,
外部電場を加えることによって機械的にナノスケールのグレーティング構造を制御についての数値解析の報告である.構造の変化によって, グレーティング構造の周辺に発生する表面プラズモンの共鳴周波数が変化する.また, イオンビームを用いてデバイスの作製も達成しており, 報告の中で配線とデバイスをコネクトし, 外部電場を加えることによる構造の変化する動画が流された.

・Wl4-6 Plasmonic Properties and Biosensing od Gold Elliptical Nanoring Arrays, Chia-Yang et al.,
リング構造の縦横費(R)を変数として, プラズモン共鳴の強度とその波長シフトを光の偏波ごとに求めた数値解析の報告である.リングの特性を円構造と円形の穴構造に同様の解析をおこなうことでより理解を深めることができる内容となっていた.結論としては, 縦横の比がきつければきついほど良く, バイオセンシングへの応用を考えているようだ.

【 注目した発表(ポスター編) 】

・TuPK-12 Lasing Characteristic of ZnO Microsphere Prepared by a Simple Laser Ablation Method, D. Nakamura et al.,
ZnOの基板上にレーザアブレーションを行うことによって, 円形の微小光共振器を作製し, より高効率なレーザ発振を確認したというものである.今回は355 nm, 532 nm, 1064 nmの3種類のQ-switchレーザを用いてアブレーションを行い, 355 nmでは共振器表面には凹凸が見られるが, 532 nm, 1064 nmでは円形の共振器を作製することができる.今回の報告では, 結晶性が保たれているかどうかまでは考察されていなかったが, レーザを単純に照射するだけの作製方法は魅力的だと思った.

・TuPM-8 Permanent Tuning of high-Q Silicon Mirroring Resonators by Fs Laser Surface Modification, D. Backman et al.,
シリコンリング共振器にfsレーザを照射し, 共振シフトをポストプロセスする研究の報告である.シリコンリングに限らず, フォトニック結晶やトロイド共振器でも一度作製した構造に対して最終的な微調整を行う目的で, ポストプロセスの研究は様々な角度から行われている.また, 今回の技術をダブルμリングフィルタにこの技術を応用することによって, 二つのリング共振器の共振周波数をマッチすることを応用として報告していた.

・Ultrafast Dynamics of the Interlayer Shearing Mode in Au Graphite Nanostructures, M. F. Avila-Ortega et al.,
グラフェン基板上に金ナノ粒子の層を蒸着した基板に対して, 80 MHzのTi:sapphireレーザを照射することで, 基板表面に表面増強ラマン散乱を発生する.ここでは, 金ナノ粒子層の厚さをパラメータとして, 発生するラマンスペクトルの強度と位相の変化についての実験結果の報告を行っていた.強度・位相のどちらもが厚さ20 Å付近にてその傾向が非連続的な振る舞いを見せており, まだ原因についてはこの時点では不明としており, 今後検討していくとのことであった.

【 Banquet 】

学会4日目の夜にbanquetが会場の横にあるグランドプリンスホテル京都で行われ, 神成先生・神成研の学生4人とともに参加した.今回のbanquetは豪華で舞妓さんや芸子さんらが歌や踊り, さらにサービングをしてくれて, 本当に楽しい2時間であった.また, 会の途中で授賞式が行われ, 神成研究室の阿部さんが学生賞を受賞した.
阿部さん, おめでとうございます.
横目で見ていて悔しかったが, 「阿部さんに負けないように研究を頑張ろう」というお決まりの結論になった.

【最後に】

CLEO-PR & OECC/PS 2013の報告では実験(特に, ファブリケーション技術)がメインであったという印象を受け, 特に, Prof. Loncarのグループのその技術力の高さには驚いた.そして, デバイスではプラズモンのセッションが非常に盛り上がっていたと思う.2件のtutorialと2つのセッションで用意されていたが, 他のセッションでも関連性の強いものは数多く報告されていた.清華大学, カルフォルニア大学, KAIST, 日本では愛媛大学など世界中の研究者らが報告を行っており, 基礎研究という印象を受けない報告も複数あった.また, 解析結果中心の報告であっても, 単なるアイディアで終わるのではなく, どの報告も最終的に実験結果まで落としていた.
一方で, 自分の研究にはファブリケーション技術としてまだまだ改善していくことができる要素がある.私自身も今回の報告を聞いていて, 実験結果を見せられた方が聞いていてテンションが上がるし, その研究に魅力を感じる.まずは自らの研究を自分が魅力的だと思えるものにしていこうと思う.