IWAM2013 加藤 拓巳・齊藤 龍介
الأبحاث
International Workshop on Asymmetric Microcavities and their Applications(IWAM) 学会参加報告
田邉研究室 加藤 拓巳,齊藤 龍介
2013年8月2~8月5日
10月6日から10日にかけてOrlando, Floridaにて行われたFiO2013 (Frontier in Optics)において
ポスター発表を行い,かつ多くの研究発表を聴講したので,その報告を行う.
【 概要 】
IWAMは,Peking UniversityのXiao グループの呼びかけによって,微小光共振器の周辺分野の研究のみを集めた専門的な研究会である.Peking Univ. の質の高い発表に留まらず,中国のその他の地域からも,優れた関連研究が集められており,2日間という短い期間ながら,10を超える講演を聴講し,議論することができた.学生の発表だけでなく,F. Vollmer教授による微小光共振器センシングの基調講演や,Chunhua Dong教授によるオプトメカニクスの講演など,その分野での大家の参加があったのも特徴的だった.Xiao教授の働きかけもあったようだが,運営はPh. D. studentであるXue-Feng jiangとBei-Bei Liを中心に行なわれていた. 学生が主体となって,積極的に研究会を催すという先進的な試みに参加できたことは,非常に恵まれていた.今後,何か機会があれば,田邉研究室でも学生が主体となって,他の大学・外国の大学の学生,教授を招いて研究会を開催するようなことができれば良いと感じた.自分らの発表は,deformed cavityやsensingの分野で,Peking Univ.が行なっている研究にある程度の親和性があったため,セッションでは積極的な質問を受けた.
【研究動向調査】
・Biosensing with optical Microcavities, F. Vollmer
微小光共振器を用いたセンシングは,単一粒子を測定するという段階から,次の段階へ移ろうとしている.単一粒子を測定する方向は,「WGM共振器に金属コート(core-shell)をして感度を上げる」「WGM共振器に金属片を近づけてプラズモン共振を局所的に起こして感度を上げる」などの”plasmon enhancement”の手法により,かなり低い閾値まで到達している.また,テーパファイバではなく,プリズムカップリングを用いることが,このセンシングの質,安定性を上げたと考えられる.次の段階の方向は,DNAの相互作用などを検知できるのではないかといった”DNA nanotechnology”である. A-T G-Cといった組み合わせが強く結びつくことを利用して,一本鎖のDNAを事前に微小球にコーティングして,ぴったし結合するDNAが付着した場合は,共振スペクトルが変化するといったことを測定することが見込まれているらしい.
ref: F. Vollmer et al., ”Label-free detection with high-Q microcavities: a review of biosensing mechanisms for integrated devices,” Nanophotonics 1, 267(2012)
・Composite microcavities and their applications in thermal sensing and Raman lasing, Bei-Bei Li, Peking Univ.
シリカトロイドは熱光学効果によって熱を加えると屈折率が上昇する.1℃上昇すると, だけ屈折率が変化する.シリカトロイドをPMDSでコーティングすることで,この熱光学係数を変化させ,熱に対して屈折率がより敏感になるように設計すると,熱センシング(Thermal sensing)として使えるようになる.PMDSのコーティング方法は,非常にシンプルなもので,テーパファイバに水滴を付けて,それをトロイドに近接させることによりコーティングが完了する.シリカの分子振動とPMDSの分子振動は異なるので,異なるラマン発光が観測された.程度らしい.
ref: Bei-Bei Li et al., ”Low-threshold Raman laser from an on-chip, high-Q, polymer-coated microcavity,” Opt. Lett. 38, 1802(2013)
・Single nanoparticle and Lentiviruses detection using microcavity resonance broading, Linbo Shao, Peking
PDMSをコーティングしたシリカトロイドによって,ナノ粒子を検知する.従来は,共振波長のシフト量(wavelength shift),モードスプリットの変化量(mode splitting)で測定する方法が主流であったが,ノイズが大きいことが欠点であり,時間経過に対して一定の値を示すことが困難であった.そこで微粒子付着によるQ値変化(mode broading)で測定しようとしている.この方法だと,時間経過に対してロバスト性が強い.程度らしい.
・Optical wavelength conversion via optomechanical dark mode, Chunfua Dong
光共振と機械振動共振の強結合によりOMITが観測されることはよく知られている.OMITを起こす機械振動はBright modeに分類される.光から直接誘起される振動である.それに対して,Dark modeの機械振動はOMITを起こさない.光と直接結合しないので,より安定に情報を蓄積できることが利点である.これらの実験をシリカ微小球を用いて研究していた.波長変換が行なえることを実証するなどPainterのグループと競るところまで来ている.この研究はPainterのNat. Comm.の論文とほぼ同着で出たようである(Painterが先).
ref: Chunhua Dong et al., ”Optomechanical Dark Mode,” Science 338, 1609(2012)
・Dynamical dissipative cooling of a mechanical resonator in strong coupling optomechanics, Youg-Chun Liu, Peking
シリカトロイド共振器の機械振動を利用したレーザ冷却.微小光共振器のレーザ冷却(図でのAのみ照射)は,backactionやswap heatingによって,冷却できる温度の限界が高めである.そこで,coolingを誘起するレーザ(図でのE)を追加で入力することで,動的に冷却の限界を数オーダーの単位で下げることができる.
ref: Yong-Chun Liu et al., ”Dynamic Dissipative Cooling of a Mechanical Resonator in Strong Coupling Optomechanics,” Phy. Rev. Lett. 110, 153606(2013)
・A dispersion tuning konb for four wave mixing parametric oscillations based on micro-bubble resonators, Ming Li
シリカキャピラリーを用いて,ボトル構造を作製している.従って中空構造の微小光共振器である.シリカ部の厚さや形状によって分散を制御することができ,を達成している.さらに,中空構造の中の物質をガスや液体に入れ替えることにより更なる制御が可能であると述べていた.実際にFWMを発生させていたが,そこまで広帯域な光コムは実現されていなかった.
ns レーザを使うと,比較的低いQ値でもFWMやラマン散乱が生じると教えてもらった.
ref: Ming Li et al., ”Kerr parametric oscillations and frequency comb generation from dispersion compensated silica micro-bubble resonators,” Optics Express 21, 16908(2013)
・Ultrahigh-Q deformed microtoroids and their applications, Xue-Feng Jiang, Peking
シリカトロイドに適切な歪みを持たせると,その放射ロスは指向性を持つ.それを利用して,Free-Space couplingを実現している.彼らの話では,deformationが15%以下であれば,は維持されるとのことである.楕円形はQ値が低くなるという話をどこかで聞いたことがあったので,ある程度維持されるというのは驚きである.2ステップでシリカトロイドを作製しており,XeF2で削り,一旦レーザリフローでトロイドにした後XeF2でさらに削るというようなことをしている.歪みはフォトリソグラフィのパターンで生じさせている. 基本的には,センシングの方面のための研究である.なぜならばFree-Space couplingは簡易で安定的であるが,効率はそこまで高くないからである.
この研究は非対称構造であり,カオスとの関連が高い.カオスとの結合により,共振波長がずれるといったことも議論されていたが,よく理解できなかった.
ref: Xue-Feng Jiang et al., “Highly Unidirectional Emission and Ultralow-Threshold Lasing from On-Chip Ultrahigh-Q Microcavities,” Adv. Mater. 24, (2012)
・High-Q on-chip optical microcavities fabricated by femtosecond laser machining, Jintian Lin
フェムト秒レーザを照射するとシリカの物性が改質し,HFエッチングに対してのエッチングレートが早くなる.それを利用してシリカディスク形状を作製し,リフローをすることでシリカトロイドを作製できる.この方法は,3次元的な構造が可能であることと,材料の幅を広げることができるのが特徴である.Nd:glassでもトロイド構造を作製し,を達成,lasingも測定していた.この研究チームは測定の環境が良くはなさそうなので,実際はもっと高いだと思われた.
ref: Jintian Lin et al., ”On-chip three-dimensional high-Q microcavities fabricated by femtosecond laser direct writing,” Optics Express 20, 10212(2012)
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