CLEOPR 2022 今村 陸

Research

CLEOPR 2022 参加報告

31st July - 5th August 2022, 札幌コンベンションセンター

博士2年 今村陸

1.報告者の発表について

タイトル Mode-locked Operation in a Coupled Microresonator System with Gain
and Nonlinear Loss
著者 Riku Imamura1, Yuki Tate1, Ayata Nakashima1, Keigo Nagashima1, Shun Fujii1,2, Takasumi Tanabe1
所属 1. Keio Univ. (Japan), 2. RIKEN (Japan)
講演番号 CThA8C-03

エルビウムイオンを添加したパルス光源開発に関する発表を⾏った.これまで当研究室では単⼀共振器にエルビウムイオン(利得)と可飽和吸収体(⾮線形損失)を与えることによるモード同期条件の解析を⾏なった.本発表では,単⼀共振器系ではなく,利得媒質と⾮線形損失媒質を結合共振器系として⽤いることで,モード同期に必要な利得が減少することを明らかにした.また実際の実験を⾒据え,⼆つの共振器の直径差がどの程度まで許容されるかについて数値解析を⾏った.
質疑応答では⼆つの質問があった.⼀つ⽬は可飽和吸収体として使⽤したカーボンナノチューブの線形損失に関する質問で,⼆つ⽬はモード同期における閾値の質問であった.開始時刻が 9 時のセッションであったが 20 名ほどの聴講者が参加していたことや,久しぶりの現地発表だったこともあり発表直前まで緊張していた.

2.聴講した発表

タイトル: Erbium-doped Rare-Earth Oxide Thin Film Waveguides for Integrated
Quantum Photonic Devices
著者: Xuejun Xu1, Masaya Hiraishi1,2, Tomohiro Inaba1, Tai Tsuchizawa3
,Atsushi Ishizawa1, Haruki Sanada1, Takehiko Tawara4
, Jevon Longdell2, Katsuya Oguri1, Hideki Gotoh1
所属: 1. NTT Basic Research Laboratories (Japan), 2. University of Otago (New Zealand), 3. NTT Device Technology Laboratories (Japan), 4.Nihon University (Japan)
講演番号: CTuP8A-01

NTT の研究グループによる,希⼟類添加導波路の発表.Si 基板と SiN 導波路の間に希⼟類添加酸化物を形成している.希⼟類としては Erイオンで,ホスト材料はGd2O3を⽤いている.理由としては Gd2O3と Er イオンの格⼦定数のミスマッチが他材料と⽐較し少ないためで,これにより⾼い結晶品質を維持したまま Si 基板上に導波路を形成できる.デバイスの 1550 nm 帯での PL の線幅は 82 GHz と狭線幅を実現している.
発表内で印象的だったのは,実験を 2.3 Kという低温で⾏っていることで,希⼟類の発光は室温下で低コヒーレンスであることが理由であった.希⼟類添加物と SiN の組み合わせは国内の研究グループからも注⽬されていることは注⽬すべき⼀つの潮流だと感じた.

タイトル: Non-Hermitian nanophotonics with photonic crystal cavities
著者: Kenta Takata1,2, Kengo Nozaki1,2, Eiichi Kuramochi1,2, Shinji Matsuo1,3,
Koji Takeda1,3, Takuro Fujii1,3, Shota Kita1,2, Nathan Roberts2, Akihiko Shinya1,2, Masaya Notomi1,2,4
所属: 1. NTT Nanophotonics Center (Japan), 2. NTT Basic Research Labs.(Japan), 3. NTT Device Tech. Labs. (Japan), 4. Tokyo Inst. Tech.(Japan)
講演番号: CTuP8B-04 (Invited)

2 次元材料とナノフォトニクスのセッションにおける NTT の研究グループの招待講
演.2000 年台から盛んに研究されてきたフォトニック結晶における⾮エルミート系のレビュー的な講演であり,⼤変参考になった.特に最新の成果(K. Takata, et. al., Phys.Rev. A 105, 013523 (2022))やナノレーザのインジェクションロックに関する報告(N.Takemura, et. al., Sci. Rep. 11, 8587 (2021))が興味深かった.講演中WGM 系にも⾔及されており,現状当研究室で計算している利得と⾮線形損失についても,対称性の破れの可能性があると感じた.

タイトル: A Novel Ultra-high Q Buckle-free Large Silica Rib Microdisk with SubMicron Thickness
著者: Shahin Honari1, Tao Lu1
所属: 1. University of Victoria (Canada)
講演番号: CThA8C-01

ヴィクトリア⼤(カナダ)の研究グループによる,ディスク共振器の作製に関する講演. 内容はディスク共振器を CMP(化学機械研磨)法で作製したという報告(S. Honari, et. al., Appl. Phys. Lett. 119, 031107 (2021))と,その続報であった.続報に関しては初め て⽬にするもので,ディスク外縁部にバックリングフリーなリブ構造を作ることにより分散制御を⾏うというものであった.講演後簡単にディスカッションしたところ,将 来的には可視光帯および⽔中でセンシングを⾏うことを⽬標にしているそうだ.また ディスク直径が 1 mm と⼤きくても熱酸化シリカ膜厚は 4 μmで歪みなく作製できる そうであること,CMP 時のシリカの粒度や研磨後の表⾯粗さなど詳細に情報共有して もらった.加えて⽔分の Q 値に対する影響も簡単に調査しており,共振器のアニーリ ングの有無では 3 倍の違いがあることも興味深かった.

タイトル: Temporal Solitons in Coherently driven Active Fiber Resonators
著者: Francois Leo1
所属: 1. Universite libre de Bruxelles (Belgium)
講演番号: CTuA1B-01 (Invited)

ファイバレーザを,微⼩光共振器を⽤いてソリトン発⽣させるときのように,デチューニングを変化させアクティブにソリトン発⽣を⾏なったという報告.元々Stéphane Coen や Miro Erkintalo らと共同研究していた⼈.注⽬すべき点はファイバリング内のEr 添加ファイバを発振しきい値以下で動作させることで,その影響か直接は⾔及されていなかったものの,誘導放出光がソリトンのスタビリティに影響を与えないという点.固体レーザのセッションに振り分けられており⾒逃すところであった.

3.最後に

気づいたこととして,2 次元材料と⾮エルミート系ナノフォトニクスのセッションをマイクロコム関係,ファイバコム関係の研究者らが多く聴講しており,注⽬度の⾼さを感じた.
真夏ではあったものの,朝⼣は⾵が吹けば⻑袖が必要なくらいの涼しさで,なによりもその気温が気持ちの良い国際学会であった.