Journal Club

年度別(4月-12月)

2012年度

発表内容:

光ダイオード(光アイソレータ)は光素子を組み合わせて光回路を作製する際に非常に重要なデバイスである.光回路へ組み込み可能な光ダイオードには, COMSプロセスによりSi基板上に作製可能かつデバイスサイズが小さいという条件が求められるが,これらの条件を満たす光ダイオードに関する研究例は存在しなかった. このような背景の下で,本論文では,Si上にCMOSプロセスを用いて作製可能な,マイクロリング共振器をベースとした光ダイオードが報告されている.
本Journal clubでは,本論文で報告されている光ダイオードの動作原理を中心に説明させていただく予定です.

発表内容:

量子情報処理を行うためには単一光子を安定して得られる光子発生源が必要です.近年,室温で安定した単一光子源となりうる,ダイヤモンドのNV中心からの発光が注目されて います.さらにNV中心による発光とプラズモンを組み合わせると単一光子発生が増強されることが分かってきています.
今回紹介する論文は,ダイヤモンド基板上にNV中心を含んだ円柱構造を作製し,そこに銀コーティングを施すことで,より効率的な単一光子発生を行えるデバイスを作製したこと を報告するものです.トップダウンな手法を用いているため,単一光子源の大量生産が可能であり,今後単一光子源を用いて大規模に実験を行うための足掛かりとなる研究です.
Key Word;nitrogen-vacancy centre, plasmon, single photon, quamtum optics

発表内容:

光の制御における究極的な目標は,単一光子を用いたものになります.しかし,単一光子の非線形光学効果は非常に小さいため, その実現は困難なものであります.この種の研究ではCavity QEDにおいて達成されていますが,未だに実用的かつロバス トな方法で達成された例はありません.

今回紹介する論文は回折限界以下のサイズのナノワイヤー上で,表面プラズモンの性質を用いることによって単一光子での 光トランジスタを提案するものになります.内容は全てシミュレーションによって説明されていますが,今後は従来のCavity QED の系と組み合わせることによって更なる発展を目指す予定です.

Key Word;surface plasmon, single-photon, quamtum optics

発表内容:

「光速を超えることはできない」というのは広く知れ渡っていることであるが,それは真空中,単一物質での話である.群速度という概念を用いると,光速より早い速度という値を導き出すことができる.本論文では”fast light’と呼ばれる光速より速く伝搬する光パルスを作り出し,それを用いてデジタル情報”1 or 0″を伝達する実験をおこなった. 実際に光速での情報伝達と”fast light’での情報伝達を比較し,「情報伝達」においても結局光速を超えることができないという1960年代から議論されてきた問題を実験的に 証明した.
本Journal clubでは,”fast light’の概念,実験手法を重点的に話したいと思います.

発表内容:

微小光共振器の中で光を閉じ込める能力と集積性に優れたフォトニック結晶というものがある.しかし,この共振器と光ファイバの相性が悪いため, 他のデバイスとの接続が困難であるという問題を抱えている.本論文では,エポキシ樹脂を用いて,光ファイバに直接フォトニック結晶を接着することによって, フォトニック結晶と光ファイバを一体としたデバイスについて紹介する.内容は主にこのデバイスを用いた4つの光学測定から成っており,4つ目の最後の光学系はすべて 光ファイバによって集積されている.
Journal Clubにおいては,デバイスの作製法と光学測定を中心に,このデバイスがこれからどのように発展していくか,についても紹介する予定である.

発表内容:

「クローキング」と呼ばれる,物体を不可視にする技術に近年注目が集まっている.波長以下のサイズの構造を用いることに よって屈折率分布を自由に設計することが可能になるので,結果として光線の伝搬経路を自由に操作できるようになる. 本論文では,シリコン上の微細構造を用いて光領域でのクローキングを実験的に確かめることに成功した.
Journal Clubにおいては,クローキング技術の進展状況及びその原理について重点的に説明する予定です.

発表内容:

テーパ光ファイバ表面への原子トラップの実現
レーザを用いた原子トラップは多く利用されている.量子効果の観測,利用には原子トラップが必要不可欠である.光ファイバを用いた原子トラップは,内部を中空にして原子をその中に入れるというものであったため, 接続が困難であった.そこで本論文では,テーパ光ファイバを用いて,エバネッセント場でセシウム原子をトラップすることに成功した.テーパ光ファイバに入力するレーザの波長と強度を調整することによって, ファイバ表面近くにポテンシャルトラップを生成し,そこに約2000個のセシウム原子をトラップした.
Journal Clubにおいては,光トラップの手法について詳しく説明する予定です.

発表内容:

機械的振動子と光共振器モードとの量子コヒーレント結合 近年,非常に微小な空間に光を閉じ込める微小光共振器を利用して,光と機械振動のモードを結合させる試みが行われている.これは光の 放射圧を利用して,機械振動を励起し,機械振動から光を励起するというコヒーレントな結合である.従来はマイクロ波-機械振動のコヒー レント結合までしか実現されていなかったのに対して,本論文では,光-機械振動の量子レベルでのコヒーレントな結合を目指した.そして 実験によって,弱い古典光パルスを使った励起により,時間領域において平均1個以下の量子のレベルで,光と微小機械振動子との間のエネル ギー交換が起こることを明らかにした.
本Journal clubでは,EITとOMITの説明,anit-crossingを重点的に話したいと思います.

発表内容:

空間光学系による量子回路は,従来よりその干渉の不安定性さや調整の煩雑さが問題視されてきた.このような背景を踏まえ,本研究では量子コンピュータの基本ゲートの一つであるCNOTゲートをSiチップ上に既存の半導体プロセスによって作製した.本研究は,光子の干渉の安定化のみならず,量子回路の小型化や集積化にも大きく貢献すると考えられる.
本Journal clubでは,光子によるCNOTゲートが実現されるに至った歴史的な経緯やゲートの動作原理など,基礎的な部分を中心に解説する予定です.

発表内容:

機械的振動子と光共振器モードとの量子コヒーレント結合
近年,非常に微小な空間に光を閉じ込める微小光共振器を利用して,光と機械振動のモードを結合させる試みが行われている.これは光の放射圧を利用して,機械振動を励起し, 機械振動から光を励起するというコヒーレントな結合である.従来はマイクロ波-機械振動のコヒーレント結合までしか実現されていなかったのに対して,本論文では, 光-機械振動の量子レベルでのコヒーレントな結合を目指した.そして実験によって,弱い古典光パルスを使った励起により,時間領域において平均1個以下の量子のレベルで, 光と微小機械振動子との間のエネルギー交換が起こることを明らかにした.
本Journal clubでは,opto-mechanicsと呼ばれるこの分野の基礎的な概念から,本実験で達成された事柄,今後の展望を説明したいと思います.

発表内容:

本論文では,Pressure Sensitive Paint (PSP)という感圧塗料に関する論文について紹介します.PSPは主に航空機などの風洞実験において用いたれ,機体表面にかかる圧力の 測定を行うものとして近年発達してきた技術です.従来の表面計測は,模型の表面に無数の穴(圧力孔)を設け,そこから伸ばした配管をつなぐことで計測を行っていましたが, PSPの測定では表面に酸素消光剤をスプレーするだけで計測が行えるため,コストが安価で,作業が簡易であり,さらには従来の点計測ではなく面計測ができるというメリットがあります. 今回はこのPSPを飛行機Beechcraft 65の翼部分にスプレーした後に,実際に仙台空港から福島の間を飛行させ,飛行中にどのような結果が得ることができるかについて報告します. 現在,宇宙航空開発機構(JAXA)のインターンシップに参加しているため,今回この論文を紹介することにしました.そのため,JAXAについての話も少し交えながら,話していきたいと思います.

発表内容:

表面プラズモンポラリトン(SPP)を用いた光回路では,SPPの局在と検出効率を同時に大きくすることは難しかった.本研究ではプラズモンとナノ細線FETの近接場カップリング を用いた新しいSPPの検出法を提案した.ナノサイズでありながら10%という高効率で検出可能で,さらに信号を増幅して検出することも可能である点が特徴である.本発表では, 原理およびプラズモンを用いる優位性について特に重点的に解説する予定である.

発表内容:

本論文では,セラミックYAGを用いたレーザで単結晶YAGに相当する110 Kというハイパワーを達成したことを発表します.セラミックスは原理的には単結晶に適うはずがないのですが,単結晶の作製方法が完全に確立されていない事とセラミックスの作製過程の改良により今回の結果を達成する ことが出来ています.今回はセラミックYAGと単結晶YAGのそれぞれのレーザ・素子の性能,そして生産的な面の比較を中心的に講義をします.

発表内容:

不確定性原理により,2重スリットを通過した単一光子の軌跡を観測することは原理的に不可能である.しかし,本論文では”weak measurement”と呼ばれる方法を用いて平均的な光子の軌跡を観測することに成功した.本発表では,用いられた原理と実験方法について特に重点的に解説する予定である.

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田邉フォトニック構造研究室にて開催する公開論文輪講です.大学院生以上の学生が,光科学,材料,バイオサイエンス等,光とその周辺技術に関連する論文を調査して,わかり易く解説します.
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