Journal Club

年度別(4月-12月)

2023年度

発表内容:

集積マイクロ波フォトニックフィルタ(IMPF)は広帯域性や再構成可能性といった点で優れた性能を提供する.しかし,従来の方法では高い再構成可能性を実現するためには複雑なシステム構造や変調方式を採用する必要があり,消費電力や制御面で大きな負担となっていた.本研究ではシリコンフォトニクスプラットフォーム上で,広帯域かつ高度に再構成可能なIMPFを実証する.BPFとBSFの両方の切り替え可能な機能を実装し,広い周波数範囲(最大30 GHz),高い除去比(BSFで約60 dB),高いスペクトル分解能(220 MHz)などを実現した.また,提案したIMPFの実用性を検証するために,高速なチャネル選択性実験と,強力な干渉抑制実験を行った.高分解能,再構成可能などの優れた性能を備えたIMPFは,6G通信の根本的なボトルネックを解消し,様々なマイクロ波・ミリ波アプリケーションを実現する上で重要なものとなるであろう.

発表内容:

偏光選択素子は、光学系の偏光を制御することができます.我々は、光学系の偏光を調整するために、シリカ微小球と単層グラフェンに基づくコンパクトなハイブリッド構造を開発しました.この動作原理は、ウィスパリング・ギャラリー(WG)TEモードとTMモードを介したシリカ微小球と組み合わせたグラフェンの偏光依存吸収です.微小球の共振モードの電界分布と偏光状態が異なるため、微小球とグラフェン間のギャップ距離によって、微小球のQ値と共振波長を変化させることができ、TEモードとTMモードのWGモードでそれぞれ異なる変化を実現することができます.ギャップ距離を2.2 µmから0.3 µmに縮めると、90°偏光方向の共振偏光モードと0°偏光方向の共振偏光モードの間で11 dBの偏光消光比が実現した。この結果は、高性能な偏波選択素子を実現するための魅力的で効果的なフォトニックプラットフォームを提供することができます.

発表内容:

擬交差を伴った,確実な2ソリトン生成の観測

マイクロ共振器中の散逸カー・ソリトン(DKS)は,様々な応用が期待されている減少である.DKS状態のうち,シングルDKS,ダブルDKSパーフェクトソリトンクリスタルは,光スペクトルから単純に識別することができる.特にダブルDKS状態は,その2パルス干渉の性質から,最近再構成可能なRFフィルターへの応用が提案されている.しかし従来のダブルDKSの生成方法では,共振器内のDKSの相対角度が確率的に変化する問題があった.本論文では97 GHzSiNマイクロ共振器において,デュアルポンプ方式により,相対角度が固定されたダブルDKS確実に発生させる方法を実証した.またソリトンの相対角度とAMXによるCWバックグラウンドとの関係を明らかにし,DKSダイナミクスに関する知見を新たに提供する.

発表内容:

マルチポイントサイドポンプ2.825μm高濃度エルビウム添加フッ化物ファイバーレーザーの出力と熱特性について数値シミュレーションにより調べた。研磨されたエルビウム添加フッ化物ファイバーベースのサイドポンプカプラを用いた4点(または6点)エルビウム添加フッ化物ファイバーレーザーは,それぞれ立ち上げられた981nmのポンプパワー100W(または75W)で100Wを超えるレーザ出力を実現した。一方、利得ファイバーチップのコア温度上昇は1 K以下であり、高反射ファイバーブラッググレーティングを高出力動作で安定に動作させることが可能である。マルチポイントサイドポンプ化物ファイバーベースのサイドポンプカプラと効果的なコーティングを施したエンドキャップの準備プロセスが成熟すれば、提案されたマルチポイントサイドポンプエルビウム添加フッ化物ファイバーレーザーは、ある程度の実現可能性があり、理論的には、効果的な熱管理を備えた100Wの中赤外ファイバーレーザーの開発に道を開く可能性がある。

発表内容:

分光器をモバイルプラットフォームに展開するために,小型な分光器開発のための新しいコンセプトが求められている.強い波長依存性を示す点広がり関数を持つ素子と,計算機とを組み合わせることで実現する"Computational Spectrometer"の概念は,この新しいコンセプトの良い解決策である.メタオプティクスは点広がり関数を操作するよう設計されており,強い波長依存性を持つ.点広がり関数が2重らせんを描くメタオプティクスを設計し,点広がり関数の波長依存性を記録することで,スペクトルの再構成を可能とした.赤外域で,約3.5 nm の分解能を達成した.

発表内容:

集積フォトニクスの進展により、安定性の高い、コンパクトで広帯域のコムジェネレータが開発され、通信、距離測定、分光学、周波数計測、光計算、および量子情報など、さまざまな応用に対応しています。広帯域の光周波数コムは、光が位相変調器を複数回通過し、光共振器内を循環する電気光学キャビティ内で生成されます。しかし、現在の広帯域電気光学周波数コムは、変換効率が低いという制約があります。本研究では、薄膜リチウムニオブ酸を基盤としたカップリング共振器プラットフォームを用いた、変換効率が30%で光スパンが132 nmの集積電気光学周波数コムを実証しました。さらに、高い効率を活用することで、このデバイスはチップ上のフェムト秒パルス源(パルス幅336 fs)として機能し、非線形光学、センシング、および計算などの応用に重要です。

発表内容:

自動運転での活用が期待されるLight Detection and Ranging(LiDAR)には,従来から,パルス光源を用いるTime-of-flight(TOF)方式や,チャープ光源を用いるfrequency-modulated continuous-wave (FMCW)方式などがある.しかし,LiDARの普及とともに,近い波長帯を利用したLiDAR同士の混信による精度の低下や,それによる事故の発生などが懸念される.そこで,非常にカオスなマイクロコムを光源とし,カオスな時間波形の相関を取ることで,混信に強い実用的なLiDARが開発されたため,紹介する. 

発表内容:

Compact narrow-linewidth visible lasers are pivotal components for optical sensing, metrology and communications, as well as precision atomic and molecular spectroscopy. With an emission bandwidth approaching an octave, titanium-doped sapphire (Ti:Sa) lasers are key tools for producing solid-state lasing across visible and near-infrared bands; however, today’s commercial Ti:Sa laser systems require high pump power and rely on expensive tabletop components, which restrict them to laboratory settings. In this paper we present a photonic-circuit-integrated Ti:Sa laser that combines the Ti:Sa gain medium with a silicon-nitride-on-sapphire integrated photonics platform, resulting in high portability with minimal power consumption. We demonstrate Ti:Sa lasing from 730 nm to 830 nm by tightly confining the pump and lasing modes to a single microring resonator, reducing the lasing threshold by orders of magnitude down to 6.5 mW when compared with the free-space Ti:Sa lasers. Due to the low threshold, turn-key Ti:Sa laser operation is achieved by leveraging a commercially available indium gallium nitride pump diode. Our prototype photonic-circuit-integrated Ti:Sa laser opens a reliable pathway for broadband tunable lasers in the next generation of active–passive-integrated visible photonics.
 

発表内容:

Abstract: For the first time, to the best of our knowledge, we experimentally demonstrate a high-speed free-space secure optical communication system based on all-optical chaos modulation. The effect of atmospheric turbulence on optical chaos synchronization is experimentally investigated via a hot air convection atmospheric turbulence simulator. It is shown that, even under moderately strong turbulent conditions, high-quality chaos synchronization could be obtained by increasing the transmission power. Moreover, a secure encryption transmission experiment using a high bias current induced chaotic carrier for 8-Gbit/s on-off-keying data over a ∼10-m free-space optical link is successfully demonstrated, with a bit-error rate below the FEC threshold of 3.8 × 10−3. This work favorably shows the feasibility of optical chaotic encryption for the free-space optical transmission system.

発表内容:

Topological photonic devices with dynamically tunable functions
are highly on demand in practice, but the majority of previously proposed
photonic systems have been limited to fixed performances, once fabricated.
Although several approaches have been proposed for obtaining the tunability
in topological photonic systems, they are limited to first-order topological
states and require rather complicated structures. Herein, second-order
topological properties of rhombic photonic crystals (PCs) are revealed, for
the first time, enabling to realize tunable photonic devices. For this
purpose, the conventional square lattice PCs composed of four rigid
dielectric rods are reshaped to rhomboid ones with preserved inversion
symmetry, which exhibit well-quantized bulk polarizations. Since the
eigenfrequencies of topological edge and corner states depend on the angle
between the neighboring sides of unit cells, the second-order topological
systems exhibit dynamic tunability, being useful for diverse applications
such as optical switching and flexible beam control. Unlike the previous
results for reconfigurable routing limited to special angles, this
lattice-reshaping mechanism has the ability to realize dynamically tunable
routing, extending the realm of applications of topological photonics. For
its simplicity and feasibility, this mechanical lattice-reshaping approach
paves the way toward higher-order topological photonic devices with
dynamically controlled functions.

発表内容:

高Q微小光共振器による散逸性Kerrソリトン(DKS)は,低ノイズかつ広帯域の並列なコム線を持つため既に数多くの分野で応用されているが,高い共振器内パワーと外部環境との大きな温度交換に起因する熱双安定性と熱雑音はソリトンマイクロコムの形成を妨げ,位相・周波数雑音を悪化させる.本研究では,高速周波数掃引と光サイドバンド熱補償を組み合わせた新たな手法を提示し,シングルソリトン状態になるための単純かつ信頼性の高い方法を提案する.また,ロッキングループを閉じることにより5.5e-15(積分時間1秒)のループ内繰り返し率不安定性を実現したことを報告する.

発表内容:

ラベルや捕獲剤を使用せずに高感度で分子を検出・同定する能力は、医療診断、脅威の特定、環境モニタリング、基礎科学にとって重要です。マイクロトロイド共振器は、ノイズ除去技術と組み合わせることで、ラベルフリーの1分子検出が可能であることが示されています。しかし、捕獲剤と標的分子に関する予備知識が必要です。光周波数コムは、微小光共振器のエバネッセントフィールド内にある分子の高精度な分光情報を提供できる可能性がありますが、空気中や水中の生体センシングでは、まだ実証されていません。特に水溶液の場合、カップリングや熱的不安定性、Q値の低下、モードスペクトルの変化などが障害となります。ここでは、微小光共振器を用いた単一分子分光法の重要な課題である、空気中または水溶液中に浸したときに可視から近赤外の波長で周波数コムを発生させることを実現しました。必要な分散はモード結合によって達成され、より大きなマイクロトロイドを用いることで達成可能であることを示しました。

発表内容:

ソリトンマイクロコムはその汎用性の高さから広く研究されている分野の一つである.精密な周波数ルーラーとして用いる場合マイクロコムは広帯域の位相コヒーレンスを示す必要があり,コムラインの位相雑音とそれに対応する光線幅がそのパラメータである.本研究はシリコンナイトライドの高Q微小共振器を用いて発生するソリトンマイクロコムの光位相雑音ダイナミクスを解析し,ラマン自己周波数シフトなどにより一部のコムラインの線幅がポンプレーザーの線幅よりも狭くなる場合があることを示すものであるソリトンマイクロコムの位相コヒーレンスにおける物理限界を明らかにし,分光コヒーレント光をチップ上で生成する際の新しい戦略となることを示す.

発表内容:

Erドープ結晶をレーザーダイオード(LD)で励起することで、低コス
トでコンパクトな構造の3μm近傍レーザーを得ることできる。CaF2とSrF2の結晶は、蛍石構造によりEr3+イオンが「クラスター」を形成しやすく、この効果によりEr3+イオン間の空間が短くなり、結晶内で激しいイオン間エネルギー移動がもたらされる。クラスターの存在により、自己終端プロセスが解決されただけでなく、Er3+ 2.8μmレーザー発生時の深刻な熱損傷も回避された。本研究では、温度勾配法を用いて高品質な1.7at.%Er:CaF2レーザー結晶の育成に成功した。LD励起2756.6nmレーザーの最大出力は2.32Wを達成した。これは、LD励起Er3+ドープフッ化物結晶で発生するレーザー出力としては、近年最高のものである。さらに、1532nmのLD励起による1.7at.%のEr:CaF2レーザーの性能も実証し、軽ドープEr:CaF2結晶内での強いエネルギー移動が証明された。これらの成果は、小型化・低コスト化を目指した中赤外レーザーの開発にとって貴重なものである。

発表内容:

フォトニクス技術の高速化に向けて,静的な電圧印加のみによって光学特性が自発的に変化するナノ構造体(フォトニック結晶)を提案する.提案したフォトニック結晶をPCSELに応用し,外部からスイッチング操作を行うことなくパルス発振が起こることを実証した.本成果は新しい方式によるPCSELパルス発生として意義があり,またキャリアフォトンダイナミクスに起因する現象のより深い理解にもつながるだろう.

発表内容:

生体深部のイメージングに用いられる2光子顕微鏡の発展に向け,Ndをドープしたカスケードラマンレーザの作成を行った.課題となる1060nmと900nm付近のモード競合を抑えるために,曲げ損失を利用し作成が容易なモードロックカスケードラマンレーザーの開発を行った.

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