Journal Club

年度別(4月-12月)

2014年度

発表内容:

デバイスの高集積化,低消費電力化の需要から電子部品のナノスケー ル化が求められている.本研究ではアルミニウムワイヤーのくびれ部分に原子サ イズのアルミニウム接点を形成することで原子スイッチを形成した.これは接点 部に電流を流すことで生じる,エレクトロマイグレーションと呼ばれる原子の位 置変化に依る電気伝導率の変化を利用している.本研究ではさらに電気伝導率の 双安定性を利用しメモリ応用も行っている.

発表内容:

生体内の代謝においてガス分子がいつ,どこで,どのような役割を果たしているかについて未だ解明されていない点が多い.それはガスの性質そのものや測定の難しさに原因があった.ガス分子の検出でしばしばラマン散乱光を測定することがあるが,ラマン散乱光は強度が弱く検出が難しい.本論文ではより安価に簡易的にSerface Enhanced Raman Scattering(SERS)を用いてマウスの脳の切片のラマンスペクトルを測定し,マッピングする新しいデバイスの作製に成功した.

発表内容:

近年,光輻射圧によるオプトメカニクスが研究されているが,その動作は数nmと非常に小さく応用にあまり向いていないと考えられている.本論文では”photon see-saw”という構造を作製し,オプトメカニクスによる回転を利用して,2つの共振器を結合させ,光子のやり取りに成功した.

発表内容:

量子通信において安定した単一光子源を開発することは重要な課題である.この解決法として量子ドットが挙げられる.原子系を励起準位に上げるためにパルスレーザを入射するが,この時パルス面積の変化により単一光子の発生回数でラビ振動が起きるため,単一光子発生の安定性はレーザ強度に強く依存してしまう.本研究では入射するパルスにポジティブチャープをかけるAdiabatic Rapid Passageという手法を用いることで安定して単一光子を発生させ,また99.5%の確率で同一の性質の単一光子を連続で発生したことをHong Ou Mandel interferenceにより確認した.

発表内容:

量子通信においてCavity QEDは単一光子源としてや量子状態を光でやり取りするために使える有名な概念である.Cavity QED内の原子は常にラビ振動と呼ばれる,常に励起準位と基準順位を行き来する振動がある.この振動をコントロールすることにより量子情報の通信を制御できると考えられている.しかし,この制御はマイクロ波領域では達成されているものの,光学の領域(optical frequency)では達成されていなかった.本論文ではフォトニック結晶とシュタルクシフト効果を用いてこれが達成された事を説明する.

発表内容:

量子力学では,重ねあわせ状態を識別できるか否かによって量子干渉が起こるかどうかが決まる.また,量子もつれ状態にあるものの片方を観測することでもう一方の状態を知ることができる.本論分では,これら二つの興味深い性質を利用した量子イメージの概念を示す.具体的には,検出したい物体と相互作用を起こした光自体は検出せずに,その物体をイメージング可能なシステムである.これによって検出器や光源の選択肢が広がることが期待される.また,本手法は量子イメージングの他の手法に比べ,同時計数測定を行う必要がないというメリットがある.

発表内容:

クローキング技術やハイパーレンズへの応用が期待されているメタマテリアルであるが, その振る舞いはメタマテリアルを構成する材料と並び方によって決まってしまうため, 高い屈折率など自然界にほとんど存在しない材料を必要とするものは作製が困難であるとされてきた. 本論文ではメタマテリアルビットと呼ばれる2つの材料のみを組み合わせることで あらゆる誘電率を持つメタマテリアルバイトを作り,それを適切に配置することで ハイパーレンズなどを作製できることを示した.

発表内容:

薄く柔らかいプラスチック基板の上にフォトニックデバイスを作製することで人体の皮膚の表面で活用できるようなセンサーなどの応用に役立つが,従来のファブリケーションの方法では,複雑に統合するのが難しくキャパシティも限られていた.今回著者らは高屈折率コントラストのカルコゲン化合物ガラ スを用いて柔らかい一枚のフォトニックデバイスを作製した.このような技術の発展は様々なフォトニックデバイスへの応用が期待される. 今回の発表ではこの技術を用いて行った実験をいくつか紹介する.

発表内容:

金を材料としたメタマテリアルによる超薄膜レンズはすでに研究されているが,本研究はプロセスの容易さや経済性において利点のある,シリコンのみを用いた 超薄膜レンズの設計・作成を行った.通常は位相を0~2πだけ空間的に変調を行うことによって波面を成形するが,今回は0~πまでの変調と円偏光 を組み合わせることでレンズを設計する.発表では,本研究の他にシリコンベースで作製された超薄膜レンズに関する研究も紹介していく.

発表内容:

光子は磁界と直接相互作用しない中性粒子であるが,最近の理論研究で光の位相が伝搬方向と共に変化する場合,光子の有効磁界が存在し得ることが示された.今回はこの有効磁界の影響をシリコンベースのラムゼー型干渉計を用いることで実験的に観測した.干渉計の長さ8.35mmのときに干渉縞消光比2.4 dBの非相反2π位相シフトに相当する0~2πの有効磁束が得られたが,この非相反位相シフトは一般的な磁気光学材料を用いたモノリシック集積型デバイスで得られるものに匹敵する. 発表では,S. Fanらの有効磁界に関する理論研究に関しても説明する予定である.

発表内容:

テラヘルツ光はセンシングやワイヤレスコミュニケーションなどに応用が期待されているが検出に用いられるデバイスには大きさの問題がある.メタマテリアルなどを用いた微小なデバイスによる検出の研究がされているが,検出可能な周波数帯域が狭いという課題があった.本論文では,フォトニック結晶を用い,構造にいくつかの改善を加えることで微小なデバイスにおける広い周波数帯での検出を可能にした.

発表内容:

近年光による情報通信についての研究が進まり,微小光共振器やEITを用いた光信号メモリについて注目が集まっている.本研究は,デバ イスに入射する光を制御することでデバイスの構造体の力学的な状態の違いを生じさせることができることをしめし,実際にこの状態の違いによって信 号を識別し保存することで,信号 の保存時間や室温での駆動などの点を改善した.

発表内容:

Optical detection of small units such as molecules or atoms has been demonstrated under cryogenic temperature by means of Raman scattering, absorption, fluoresence and etc. However, whatis already detected is the ensemble signals of single molecules, which rapldly decays in order of pico-second due to the decoherence of emitted signals. Hence, the truly meaning of “Single” molecule vibration detection is first reported in this paper. The talk will be held in English this time for personal reasons.

発表内容:

近年では動画のダウンロードなど膨大なデータ通信が多くなり,より大容量な通信が望まれている.光通信においては,その通信容量を上げるために波長分割多重や時間分割多重,偏光分割多重など様々な多重化が考えられてきた.本研究では,これらに加えることが出来る要素として軌道角周波数を用い,偏光とともに多重化することでテラビットオーダーの大容量通信を実現した.

発表内容:

アップコンバージョンナノ粒子は赤外光を可視光に変換できるため,太陽電池や生態イメージング への応用が期待されている.アップコンバージョンナノ粒子として機能させるためには赤外光を吸収する増感剤と可視光を放出する活性剤をドープする必要がある.放出される可視光の強度は活性剤の量によって決まり,活性剤の量には最適量があることが先行研究により既に示されている.つまりナノ粒子から放射される可視光強度は本質的に限られていると世間ではとらえられている. 本論文ではこの限界を超える方法を検討し,従来の最高強度と考えられてきた発光強度よりも70倍強い可視光を放出させることに成功した.

発表内容:

CO2レーザを用いてトロイド微小光共振器とテーパファイバを溶接的に結合させることに成功し, Q値にして3.21×10^5を達成した.さらにそれをフェムト秒レーザを用いて作成した3次元微小流路を使いトロイド微小光共振器の光学測定を行い,食塩水の濃度に応じて変化する屈折率を10^-4のオーダーで測定することに成功した.この実験のポイントは高Q値を持つトロイド微小光共振器と3次元的微小流路をパッケージング した点にある.

発表内容:

pn接合を埋め込んだフォトニック結晶導波路を用いて10Gb/sの光変調を初めて行った.フォトニック結晶導波路はCMOS互換性のあるプロセスで作製しており,シリカクラッドを被せている.光変調はnon-return-to-zeroの電気信号を利用して行い,10Gb/sと2Gb/sの変調速度でそれぞれ良好なアイパターンを観測した.発表ではスローライトやCMOS互換プロセスを利用したフォトニック結晶共振器の関連研究も紹介する.

発表内容:

絶対安全な通信方法として単一光子による量子鍵配送が提案されているが,量子通信ネットワークを実現する際の問題の一つとして高精度な受信器(検出器)が各々に必要であることが挙げられる.これに対し本研究では,受信器一つに対し送信者複数という1対多のネットワークを提案し,実際に実験による検討を行った.使用する受信器が一つであることから容易にネットワークを構築することができ,これにより量子通信がより身近なものになると期待される.

発表内容:

近年,ランダムレーザーなどランダムな媒質,構造のデバイスに関する分野において著しい研究成果が多く報告されている.ランダムなデバイスにおいては光のモードも複数かつランダムになるが,理論的にあるモードの光を選択できることが示された.本研究では実際にそのデバイスを作製し,その結果を検証している.またデバイスにポストプロセスを加えることによってどのような現象が生じるか検証している.当日は実験結果を中心に説明する予定である.

発表内容:

近年,Cavity QEDなどといった原子と光学デバイスの組み合わせに関する分野において著しい研究成果が多く報告されている.本研究では新たにAlligator Photonic crystal waveguide(APCW)と呼ばれる特殊な形状のフォトニック結晶導波路を提案した.このAPCWの特徴として,APCW自体が原子を導波路付近にキャッチ・操作することが可能である点である.このAPCWの将来の展望として,同一チップ上に集積した原子と光子の混合するシステムを構築することが可能になることである.当日はAPCWの詳しい原理を説明する予定である.

発表内容:

宇宙船開発の中で太陽帆(Solar Sail)と呼ばれる太陽の光圧を推進力とする宇宙船の開発が行われている.従来は帆となる薄膜の反射率を変えることにより推進力を制御する方法が一般的であるが,本論文では物体の構造による光圧の推進力の制御の提案を行い,計算過程と実証を行っている.これは新たな太陽帆の設計手法となりえる成果である.

発表内容:

損失と利得のバランスのとれた光学システムは古典的な量子システムに類似した独自のプラットフォームを与えることがある.本論文では,非線形効果が高められるような高密度に光を集めた光共振器の中で,パリティタイム(PT)対称性の破れが起こっていることを示した. 今回はあまりなじみのない分野であるが,なるべくわかりやすく解説できるように意識して発表する.

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