Journal Club

年度別(4月-12月)

2018年度

発表内容:

エレクトロニクスとフォトニクスの技術は産業界を支える重要なテクノロジーであるが,この2つの技術をon-chipで統合することは従来からの大きな課題であった.Silicon-on-insulator (SOI)などの技術は存在するものの,多くのアプリケーションへの適用には膨大なコストが必要となる.
そこで,本研究はpolycrystalline silicon層を導入することでフォトニクス技術をCMOSプロセスに組み込んだ.これにより,導波路構造や高速変調器,フォトディテクタなどの多様な光学素子をトランジスタとともにCMOSプロセスで1つのチップ上に集積出来ることを検証した.

発表内容:

In this paper, we have proposed a metal-insulator-metal (MIM) pressure sensor which consists of two plasmonic waveguides and a double square ring resonator. The two square rings are connected via a rectangular patch located between the two of them. The surface plasmon polaritons (SPPs) can be transferred from a square ring to the other through this patch. The finite-difference time-domain method (FDTD) has been used to simulate the device. Applying a pressure on the structure, it deforms, and a red shift of 103nm in the resonance wavelength has been calculated. The deformation is linearly proportional to the wavelength shift in a wide range of wavelength. The proposed optical plasmonic pressure sensor has a sensitivity of 16.5nm/MPa which makes it very suitable for using in biological and biomedical engineering.

発表内容:

信頼性があり非侵襲的な方法でナノスケールの粒子を光学的に捕捉する能力は、ナノサイエンスにとって重要な能力として浮上している。そのため、ナノスケールの粒子の捕捉のためにプラズモニックナノ構造を含む様々な技術が導入されている。しかしながら、プラズモニクスに基づくナノ光学ピンセットは、金属における高い損失のためにジュール加熱の問題に直面する。ここで本研究は実験的に非プラズモンアプローチ、すなわちシリコンナノアンテナを用いたナノ粒子の光トラッピングと輸送を実証する。ここでは直径が20と100 nmのポリスチレンナノ粒子を捕獲し、時間の関数としてそれらの位置を追跡するために蛍光顕微鏡を使用した。これにより、複数のナノ粒子を単一のナノアンテナで同時に捕捉できることを示した。また、わずかな熱発生で強化された光学力を予測するナノアンテナのシミュレーションを示した。本研究は、シリコンナノアンテナが有害な熱加熱効果なしにナノ粒子を光学的に閉じ込めることを可能にすることを実証している。

発表内容:

“Lateral graphene p–n junctions are important since they constitute the core components in a variety of electronic/photonic systems. However, formation of lateral graphene p–n junctions with a controllable doping levels is still a great challenge due to the monolayer feature of graphene. Herein, by performing selective ion implantation and in situ growth by dynamic chemical vapor deposition, direct formation of seamless lateral graphene p–n junctions with spatial control and tunable doping is demonstrated. Uniform lattice substitution with het- eroatoms is achieved in both the boron-doped and nitrogen-doped regions and photo- electrical assessment reveals that the seamless lateral p–n junctions exhibit a distinct photocurrent response under ambient conditions. As ion implantation is a standard technique in microelectronics, our study suggests a simple and effective strategy for mass production of graphene p–n junctions with batch capability and spatial controllability, which can be readily integrated into the production of graphene-based electronics and photonics.”, cited from [Gang Wang, et al “Seamless lateral graphene p–n junctions formed by selective in situ doping for high-performance photodetectors”, Nature Communicationsvolume 9, Article number: 5168 (2018).]

発表内容:

Detection of weak radial velocity shifts of host stars induced by orbiting planets is an important technique for discovering and characterizing planets beyond our solar system. Optical frequency combs enable calibration of stellar radial velocity shifts at levels required for detection of Earth analogs. A new chip-based device, the Kerr soliton microcomb, has properties ideal for ubiquitous application outside the lab and even in future space-borne instruments. Moreover, microcomb spectra are ideally suited for astronomical spectrograph calibration and eliminate filtering steps required by conventional mode-locked-laser frequency combs. Here, for the calibration of astronomical spectrographs, we demonstrate an atomic/molecular line-referenced, near-infrared soliton microcomb. Efforts to search for the known exoplanet HD 187123b were conducted at the Keck-II telescope as a first in-the-field demonstration of microcombs.

発表内容:

IoTは物理的環境のデータ(温度や湿度,気圧)を得るために多くのワイヤレスセンサを用いており,環境計測,ヘルスケアセンサ,スマートシティ,精密農業など様々な応用が考えられている.ワイヤレスセンサは環境のデータを収集,分析し,送信する.一般に,IoTで使用されている無線センサは,多くの状況で電磁干渉を受ける可能性がある電子デバイスで主に構成されている.光学センサは電磁干渉の影響を受けないため,過酷な環境で大きな利点をもたらす.さらに,光の相互作用を増強するために光共振を導入することにより,共振器に基づく光センサは,小型で,感度が高く,汎用性の高い機能を発揮し,無線センサの能力と柔軟性を大幅に高めることができる.本研究ではウィスパリングギャラリーモード(WGM)光共振器を用いたワイヤレスフォトニックセンサノードの初めてのデモンストレーションを行った.

発表内容:

 近年、光渦などに代表される軌道角運動量(OAM)を有するビームに関する研究が盛んであるが、単に検出するだけでなく具体的な値を計測するデバイスはバルクサイズに限られていた.本研究では、新たなCMOS互換プラズモニックトポロジカル絶縁体Sb2Te3を利用し、微小OAM計測器を作成した.
提案するトポロジカル絶縁体は従来用いられるAuなどと比べても紫外~可視光領域で優れた特性を持ち、クロストーク-20dB以下の高精度なOAM計測が可能である.
当日はトポロジカル絶縁体、OAM、表面プラズモンポラリトンについても簡単に紹介する.

発表内容:

光学式ジャイロスコープはサニャック効果を用いることで回転速度を検出することができる.この原理を用いたジャイロスコープはナノフォトニック構造上に小型化するのにとても適している.しかし,ジャイロスコープのS/N比は一般的に熱の揺らぎ,作製のミスマッチなどによって制限されてしまっている.このようにマイクロスケールでは信号の強さが比較的小さいことが原因で,これまで集積化されたナノフォトニックジャイロスコープというのは実現されていなかった.
本研究では,熱のゆらぎや作製のミスマッチを抑制するために”reciprocal sensitivity enhancement”という新たな手法を用いることで超小型のジャイロスコープを実現した.従来の光ファイバジャイロスコープよりも500倍も小さいのにもかかわらず,30倍の感度を達成した.

発表内容:

The Nobel Prize in Physics 2018 has been awarded one half to Arthur Ashkin for the optical tweezers and their application to biological systems, and the other half jointly to Gérard Mourou and Donna Strickland for their method of generating high-intensity, ultra-short optical pulses. Dr. Strickland is the third woman among the 210 laureates who have received the nobel prize. In the presentation, a brief look at the scientific work awarded this year will be introduced, then the newest work by Dr. Strickland’s group will be shown, where they reported a compact, high-average-power, sub-picosecond, two-color (1025 and 1085 nm) fiber-coupled, chirped pulse amplification Yb:fiber laser.

発表内容:

結晶共振器はソリトンの生成をはじめ、低雑音マイクロ波発生や周波数安定化など、非常に多岐にわたる応用の基盤プラットフォームとして注目を集めている。
そこで本研究ではシリコンナイトライド導波路からエアブリッジ構造のシリカ導波路に光を入れることでオンチップで高効率なカップリングを達成した。
本手法はテーパファイバを用いたカップリングと比較してロバストでパッケージングに向いている。

発表内容:

 Electronic oscillator circuit are used in a lot of domains going from telecommunications to clock generation. Unfortunately, they can exhibit some unwanted feature such as phase noise which is unavoidable. These non-idealities of electronic oscillator circuits is a motivation for the design of opt-electronic oscillators.

発表内容:

Erbium doped fiber amplifier is a key device in WDM/DWDM technology. The task of modeling EDFA is computationally expensive. In this paper we investigate the application of multilayered feed-forward neural network to model an EDFA.

発表内容:

近年の環境問題に際し、従来のプラスチックの代用としてセルロース系材料が再び関心を寄せている.そこで本研究では、ソフトリソグラフィを利用したヒドロキシプロピルセルロース(HPC)製フォトニック構造・プラズモニック構造の作製を行った.このセルロース製フォトニック結晶は生体応用が可能かつ水など各種溶媒によって分解可能で、フォトニック構造による着色や、フォトルミネッセンスの増強が可能である.さらに、金属コーティングを行いプラズモニック結晶を形成する事で、表面増強ラマン分光としても利用する事が可能であることを示す.

発表内容:

光共振器をマイクロ流体デバイスに統合した光流体色素レーザは少量,低濃度の対象物の高感度検出を可能にする.本研究では,微小液滴光共振器を用いたFRET(フェルスター共鳴エネルギー移動)ベースの多色レーザを実現した.ここではクマリン102を導入した単分散の微小流体液滴を生成した.この球状の液滴がウィスパリングギャラリーモード光共振器として機能し,波長約470 nmでレージングした.液滴共振器に含まれる利得媒質の構成は変えることができ,ローダミン6Gを流動している液滴に導入することで,発振波長を青色から橙色(~590nm)に変えることができる.ローダミン6Gによるレージングの際,クマリン102による放射は全く観察されなかった.今回のように,同一の液滴共振器においてレージングの色を制御できることは共振器内または共振器まわりにあるターゲットとなる複数の種類の分子を連続的に検出することができる.

発表内容:

フォトニクスのデバイス集積において,ファイバとチップ間,チップとチップ間などのインターフェースは従来から課題とされてきた.従来のアプローチでは高精度なアライメントが要求され,またモード特性の調整も正確に考慮する必要があった.そこで,本研究では3Dプリントされたビーム形成素子をファイバやチップの端面に形成することでカップリング効率を向上させた.また,3Dプリントされた自由形状ミラーでビーム形状や伝搬方向を調節し,マルチレンズによるビームの拡大も実現した.これにより,複数チップの統合において大きくパフォーマンスを向上することが出来た.

発表内容:

インターネットは数百Tbit/sの情報を送り、世界中の電力消費の9%を消費している。毎年20~30%の割合で増加するエネルギー消費を抑えるためにもより高効率な通信用光源が必要とされている。そんな時代潮流の中、多くのレーザー光源を同時に使う代わりに一つのコム光源を利用することで省エネ・省スペースを実現することが期待されている。本研究ではAlGaAsを用いた導波路を利用することで66%という非常に高い効率でコムを生成することに成功をした。このコム光源を情報通信に用いることで661 Tbit/sを達成した。

発表内容:

光を一方向にのみ伝搬させるような光素子,光アイソレータは幅広い応用において重要である.音波の非相反な伝搬は回転する機械的な素子を用いることで実現することが可能である.今回は,同じような考えを光波にも適用し,光アイソレータの実現を試みた.しかし,光波は音波よりもかなり速いことから,同じ効果を期待するにはかなりの回転速度が必要となる.そして,回転速度が速いことから軸ブレなどが生じ,共振器と導波路との距離を維持するのが難しく,クリティカルカップリングを維持できない.結果として,これまでアイソレーションするのには別の方法が採用されてきた.
そこで,HDDにおいて流体力学的にナノメートルの正確さで磁気ヘッドがディスクから浮上している原理を利用し,共振器から数ナノメートル離れたところでの結合を実現した.今回の実験では,共振器を高速回転させることで,時計回りと反時計回りのモードをスプリットさせ,99.6%のアイソレーションを実現した.

発表内容:

高度道路交通システム (ITS) は、信号機の制御などに使われるインフラ基盤技術である。本研究では、ITSに必要とされる「交通量計測、速度計測、車種の区別」の技術的タスク3つを同時に行なうことのできる、レーダーセンサーを提案した。

発表内容:

熱や光、磁場などの刺激に応答して形状が変化する軟質材料は、フレキシブルエレクトロニクスやソフトロボティクスから薬物送達、生体組織工学などの生物医学的課題に至るまで、数多くの用途に利用できる可能性を秘めている.特に、材料を閉鎖空間で遠隔操作して動かす必要のある医療用途では、磁場を用いたものが有望視されているが、現在の作製方法では、単純な形状変化しか起こす事ができなかった.
本研究では、磁気によって活性化し、1秒とかからないうちに変形する軟質材料を印刷する技術を紹介する.3Dプリンターのノズルを磁化してシリコーンゴムマトリクス内の強磁性微小粒子の配列を制御することで、可逆かつ動的な変形が可能な構造物を作製することができる.作製した材料は、回る、跳ぶ、物体をつかむといったさまざまな有用な動作をプログラムすることができ、様々な応用が期待できる.

発表内容:

等間隔な周波数成分を持つ光周波数コムは,現代の周波数計測学や精密分光,天文分光,超高速光学,量子情報工学の基礎である.超高Q値を持つモノリシックな微小共振器におけるカー効果やラマン効果といった非線形性を利用したチップスケールの周波数コムは,時間的共振器ソリトンが観察され近年進歩してきた.しかし,光コムの形成を決定づけるレーザ共振器内の波長分散を電場で調整するのは,微小共振器でもファイバー共振器でも一般的に難しい.そのような電気的な動的制御は光周波数コムと光エレクトロニクスを結び付け,高速で便利な同調性で単一共振器において様々な光コムの出力を可能にする.並外れたフェルミ―ディラク同調性と超高速なキャリア移動度によって,グラフェンはゲート電圧で調整可能な光学電導度によって決まる複雑な光分散を持つ.ここでは我々は,ゲートで調整可能な光学伝導度を窒化ケイ素微小光共振器に導入し,二次と高次の波長分散を変化させることでグラフェンを用いたゲートによる光周波数コムの共振器内同調性を示した.

発表内容:

In the report we demonstrate how, using laser light, effectively trap gas bubbles and transport them through a liquid phase to a desired destination by shifting the laser beam position. The physics underlying the effect is complex but quite general as it comes from the limited to two-dimension, well- known, Marangoni effect. The experimental microscope-based system consists of a thin layer of liquid placed between two glass plates containing a dye dissolved in a solvent and a laser light beam that is strongly absorbed by the dye. This point-like heat source locally changes surface tension of nearby liquid-air interface. Because of temperature gradients a photo-triggered Marangoni flows are induced leading to self-amplification of the effect and formation of large-scale whirls. The interface is bending toward beam position allowing formation of a gas bubble upon suitable beam steering. Using various techniques (employing luminescent particles or liquid crystals), we visualize liquid flows propelled by the tangential to interface forces. This helped us to understand the physics of the phenomenon and analyze accompanying effects leading to gas bubble trapping. The manipulation of sessile droplets moving on the glass surface induced via controlled with laser light interface bending (i.e. “droplet catapult”) is demonstrated as well.

発表内容:

現代の癌治療においては、生検法で組織学的に分子やゲノムを解析する必要がある。腫瘍内不均一性のある癌において正確に場所を特定し一度で適切にサンプルを採取することは、患者のリスクを下げるために重要である。本研究では、ラマン分光法により採取中にその場で癌細胞の特定を可能にする技術を提唱し、癌検知を実証した。

発表内容:

有機半導体を用いることにより,軽量かつ機械的にフレキシブルなオプトエレクトロニクスデバイスを作製することができる.しかし,ほとんどの有機半導体レーザでは,支えるための基盤が必要なこともあり,今まで”硬さ”が依然として残っていた.そこで本研究では,簡単な作製プロセスで,基盤レスで,極薄(<500 nm)の膜型のDFBレーザを作製し,超軽量で高い柔軟性を達成した.この軽量かつ柔軟性の高さを利用し,コンタクトレンズや紙幣などに組み込むことで,将来,セキュリティや医療といった分野への応用が期待できる.

発表内容:

本研究ではシリカトロイド共振器においてPT対称性を崩すことなく自発的にカイラリティを出すことに成功をした.この円二色性はCWとCCWの結合が非線形効果によって変化することに起因している.数百uW程度のしきい値を入力光強度がこえると非線形効果が影響し,20:1程度の円二色性が出ることが実験的に実証された.

発表内容:

ソフトロボットは人間と自然環境によりうまく適応できる安全なロボットであり,近年様々な開発が行われている.しかし,すべての部位をソフトなマテリアル で作製するのは困難であり,一部金属を用いる必要があった.今回,金属などを用いずにすべての部位をソフトなマテリアルで実現したタコ型のソフトロボットを作製した.なおかつ,外部電源に接続する必要がなく,触媒反応を利用した自律的なロボットの作製が可能になった.

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