Journal Club

年度別(4月-12月)

2016年度

発表内容:

リプロンレーザは,ラマンレーザやブリルアンレーザと異なり,光とキャピラリー波の間のエネルギー交換によって生じるレーザである.キャピラリー波は液体固有の波であり,表面張力を復元力として振動する.水中に光ピンセットでトラップしたオクタンの微小水滴をopto-capillary共振器として,光とキャピラリー波の相互作用を測定した.この結果から,基底状態に向けた室温でのopto-capillary coolingが期待される.

発表内容:

マイクロヒータを内蔵した2つのシリコンナイトライドリング共振器を用いて発生したスクイーズド光レベルの連続的なチューニングを実現した.導波路との結合状態を変化させることによって0.9dB~3.9dBにわたるスクイーズドレベルの変化を観測した.これらの結果は適切なスクイーズドレベルが要求されるアプリケーションにおいて重要な役割を果たすと考えられる.

発表内容:

超高速データ記録、量子計算、スピントロニクスなどの将来の情報技術には、光によるかつてない速さのスピン制御が必要になる。強力なテラヘルツパルスは、磁気励起に固有のエネルギースケールでスピンと結合できる。今回我々は、テラヘルツ磁場との線形ゼーマン結合よりもはるかに強い、電気双極子が媒介する非線形テラヘルツ–スピン結合の新たな機構を調べている。我々は、典型的な反強磁性体ツリウムオルソフェライト(TmFeO 3 )を使って、電子軌道遷移をテラヘルツ共鳴励起すると、規則正しいFe 3+ スピンの磁気異方性が変調され、振幅の大きなコヒーレントスピン振動が生じることを実証している。この機構は、本質的に非線形であり、テラヘルツ波形のスペクトル成形によって調節でき、効率はゼーマントルクを1桁上回る。全ての遷移金属酸化物では軌道状態が磁気異方性を支配するため、今回実証した制御方式は多くの磁気材料に適用できると予想される。

発表内容:

1次元フォトニック結晶共振器2つを平行に並べたペアを、ポンプ光とプローブ光それぞれに対して1ペアずつ用意し、それぞれがメカニクスの振動を介して影響しあう構造を作製した。この構造の利点は、ポンプ光とプローブ光の光路が異なるということである。実験結果から観測されたオプトメカニクスの振動周波数は、FEMを用いた計算結果とよく一致している。また、ポンプ光によってプローブ光に対応するフォトニック結晶共振器の透過スペクトルをダイナミックに変化させる実験結果も得ており、発振器への応用も期待される。

発表内容:

シリコン基板上に作製したInGaP導波路を用いて,中心が1550 nmの1オクターブに広がるスーパーコンティニウムを実現した.従来研究よりも,低消費パワー・小面積,で実現できているという利点は,発生したスペクトルのコヒーレンスを高く保つことができるという点にも寄与している.

発表内容:

オールパス-マイクロリング-ブラッグ格子ベースでEITのような透過特性を示す結合共振システムを提案・実証した.「マイクロリング共振器」と「2セクションのブラッグ格子で構成されたファブリーペロー共振器」の光導波路間での結合はEITのようなスペクトルを引き起こす.このシステムはマイクロリング共振器とバス導波路のシンプルな構成であり,製作誤差にも強いメリットがある.結果ではExtinction rate(ER)が12 dB,FWHMが0.077,Q値が20200となり,シミュレーションとよく一致した.

発表内容:

光周波数の変換,コントロールは多くのアプリケーションにとって非常に重要な技術となる.本研究では動的に変調されたリング共振器を用いてブロッホ振動を介した周波数変換が可能であることを実証した.さらに周期的に変調を加えることで単一方向への周波数変換が可能であることも明らかにした.これらの結果は動的共振器システムを用いた光周波数操作の可能性を示すものとなる.

発表内容:

単一フォトンの周波数制御技術は量子通信には必要不可欠であるが,従来の非線形光学効果を利用した方式ではノイズや帯域幅などに問題があり実用化は困難であった.本論文では,オプトメカニクスを原理とした単一フォトン周波数シフタを作製し,ノイズを付加しない150 GHzまでの変調を限りなく1に近い変換効率で行えることを実証した.

発表内容:

量子テレポーテーションによって、ネットワーク中の遠隔ノード間で量子状態が忠実に転送され、革新的な情報処理応用が可能になる。これを動機付けとして、膨大な研究活動が行われてきた。しかしこれまで、独立した量子光源、ベル状態測定(BSM)前のエンタングルメント配送、フィードフォワード操作を同時に用いた量子テレポーテーション実験は、実験室環境でも実現されていない。今回我々は、この難題に取り組み、12.5 kmの区域に配置された30 kmの光ファイバー量子ネットワークの構築について報告する。このネットワークは、能動的安定化法によって実世界の雑音に対してロバストであるため、同時に全ての要素を満たす量子テレポーテーションが実現可能になる。量子状態測定およびプロセストモグラフィー測定と、独立した統計的仮説検定の両方によって、このネットワーク上での量子テレポーテーションの量子的性質が確認されている。今回の実験は、実世界における地球規模の「量子インターネット」の実現に向けて重要な一歩となる。

発表内容:

whispering gallery modeはその回転対称性のために指向性光源としての応用が難しい.回転対称性を破るために共振器の形状を変形させるといった手法が提案されてきたが,これらは共振器のQ値が大きく減少してしまうという欠点があった.本論文では変換光学を用いてwhispering gallery modeのモード特性を自在に調節し,Q値を保ったまま指向性発光を実現する手法を示す.

発表内容:

リング型レーザは時計回り(CW)のモードと反時計回り(CCW)のモードを持つため,強度が不安定なレーザ光がシリコン導波路の両方向へと出力されるという問題があった.本論文では,リング型レーザを局所的に変形させた構造を採用することでCWとCCWの比率が操作可能であることを計算で示し,実際に作製したリング型レーザを用いた実験を通して,強度が安定したレーザ光をシリコン導波路の一方向のみから得られることを実証した.

発表内容:

近年光流体力学は生体分析において重要な手法となりつつある.特に光流体力学を用いたレーザは蛍光を用いたレーザに比べて感度やイメージング解像度におい て非常に勝っているとされているが,あまり研究が進んでいない分野でもある.本研究では,インドシアニングリーンという近赤外染料を用いて人間の 血液中における主な成分を用いたレージングを行った.さらに,インドシアニングリーンを用いて初めて人間の血液でのレージングを行った.

発表内容:

現行のレンズ製造工程では,レンズの大きさと形状が限られるため,光学性能に制限がある.高い光学性能と収差補正を実現するには,非球面形状のマルチレン ズ素子が必要である.Timo Gissiblたちは,フェムト秒レーザーによる直接書き込みシステムを用いて,およそ0.1 mmの大きさのマルチレンズシステムを3D印刷した.マルチレンズシステムは容器状支持体の中で複数のシングレットレンズ(単レンズ)を組み合わせて複合レンズにした構造であり,1秒間に数センチメートルの速さで印刷される.

発表内容:

光時計は重要な基礎研究の強力なツールであるだけでなく,セシウム原子時計よりも正確性と安定性が1桁以上良いことから,SI単位「秒」の再定義に用いられることも考えられている.しかしこの移行の重要な障害は光時計の信頼性の低さであり,それがタイムスケールの連続的な実現を非現実的にしている.今回,私たちはこの状況をどのように解決するかを示し,セシウム原子泉時計を上回る光時計のタイムスケールが確立できることを示す.

発表内容:

レーザーフィラメントは高強度レーザーによるカー効果の収束とプラズマ発生による発散の2つの効果が平衡することにより生じる安定状態である.本研究ではkHzの繰り返しでのレーザーフィラメントを中赤外帯において初めて実証した.
さらに中赤外帯におけるフィラメントは様々な化学物質のセンシングに有用となると考えられており,大気中のCO2の吸収分光を確認したためそれらに関しても報告する.

発表内容:

メチルアンモニウム臭化鉛(MAPbBr3)ペロブスカイト単結晶を用いたX線検出器を初めて作製した.検出可能な最低X線量は0.5 µGy air s -1 であり,非常に高感度なX線検出器として知られているα-Se X線検出器より4倍高い感度が得られるなど非常に高感度な結果が得られた.この結果は医療や保安検査において役に立つと考えられる.当日は作製における工夫を中心に述べる予定である.

発表内容:

信号のリアルタイムフーリエ変換(RTFT)は従来のデジタル信号処理エンジンの限界を超える速さでフーリエ解析を可能にする基本的な概念である.光学分野でRTFTは通例,時間領域に沿った信号の周波数スペクトルをマッピングすることが大事とされる,大量の群速度分散を励起を行うときに用いられる.しかしこの手法の光学周波数分解能は通常ギガヘルツ以上に制限され,リアルタイム分光や超高速検知・イメージング・センシング,そして特に光学援助RF信号発生・プロッセッシングといったアプリケーションの妨げになっている.私たちは新しいRTFTのコンセプトを周波数シフトフィードバックレーザを用いて実験的に行い,周波数分解能はおよそ30kHzかつ時間帯域幅積は400を超す結果を達成した.

発表内容:

フェムト秒レーザを用いた水中におけるフィラメンテーションにより生成される泡には,微小流路スイッチ,細胞の仕分けといった応用が期待されている.本研究ではフィラメンテーションにより生成される泡の動きを顕微鏡にて直接観察し,生成される泡がフィラメンテーションにより生まれる水の流れに沿って動くことを観察した.また,泡の移動方向とレーザーの伝搬方向とのなす角度はフィラメントとの距離によって変化し,フィラメンテーションにより生じる水中の対流のプロセスについて明らかにした.

発表内容:

波長1550nmの光と周波数2.4GHzのフォノンを保持するオプトメカニカル共振器を、フォトニック導波路およびフォノニック導波路と組み合わせた新たなプラットフォームを開発した.RF波と光波を用いてメカニカルモードを励起,または読み出しすることによって,光領域とRF領域,メカニカル領域間でコヒーレントな信号を変換できることを実証した.

発表内容:

アト秒時間領域分光法から周波数コムによる計測まで、これまでに行われた最も精密な測定の中には、モードロックレーザーによって可能になったものがある。しかし、そうした極端な精度には、基礎となるモードロッキング・ダイナミクスの複雑さが隠れている。この複雑さは、本質的に特異な非反復的遷移であるモードロック状態の出現において特に顕著である。モードロッキングの詳細の多くは十分理解されているが、従来の分光法では、単一パルス周期というナノ秒の自然な時間スケールで、受動的モードロッキングにおける初期のダイナミクスを分解できない。今回我々は、フェムト秒パルス列のパルス分解スペクトル発展を初期の揺らぎから捉え、連続して約90万周期にわたって記録している。我々は、広帯域スペクトルの出現、付随する波長シフト、補助パルスモードロッキングとして表される過渡的干渉ダイナミクスなど、数十から数千往復の時間スケールで臨界現象を直接観測している。今回の結果は、時間伸張変換によって可能になったものであり、レーザー設計、超高速診断法、非線形光学に影響を及ぼす可能性がある。

発表内容:

非線形に結合しているオプトメカニクスが生み出すカオスについて調査した.大きく2つの点が調査によって明らかになった.1点目はカオス状態がメカニカルな経路によって転送されることで,2点目はカオス状態がある方がSN比を向上させることができるということである.当日は,本研究で利用したものがstochastic resonanceという分類に当てはまることについて詳細に説明する.

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