Journal Club

年度別(4月-12月)

2021年度

発表内容:

サブハーモニック位相変調光励起微小共振器における完全ソリトン結晶(PSC)発生を数値的に検討した。変調されたポンプ周波数成分の一部は、変調されたポンプモードと共振器モード間のバーニア効果を通して微小共振器内に結合され、ソリトン形成のためのチャープされた周期的な波が形成される。ポンプ効率の向上により、10GHz程度のFSRを持つ微小光共振器において、5-20個のソリトンを持つPSCが実証された。さらに、変調器を取り除くことで、PSCの状態を維持したままポンプパワーを減少させることが可能であることも明らかにした。本研究で提案した方式は、ソリトンダイナミクスの研究に新たな手法を提供し、ソリトンの応用の自由度を高めるものである。

発表内容:

自由電子ビームは微細構造や組成への多用途なプローブです。電子と光子の相互作用によって過去10年間でイメージング手法や4次元顕微鏡技術に大きな発展がありました。しかし、電子ビームは通常、光とは弱く結合するのみで、電子の制御や検出にはより強い相互作用が求められていました。
本研究では、ウィスパリングギャラリーモード共振器を用いて、自由電子ビームと共振器モードを結合させています。
これにより、伝搬する電子のスペクトル幅を700電子ボルトまで拡大することに成功しました。

発表内容:

光集積回路は安価でチップサイズの光学素子を作製できるため近年注目されています。その中でもレーザーは光集積回路にて重要な素子であり、最近になって多層ヘテロジニアス集積によるSiN導波路と完全に一体化が実現しました。しかし,フォトニクス用途が集中する通信用波長では,大きなモード遷移損失,最適化されていない共振器設計,複雑な製造プロセスなどの理由により,高い素子収率と高出力を実現するレーザーはまだ存在していません。本論文では,これ
らの問題を解決し,SiN導波路を介して数十ミリワットの出力を持ち,サブkHzの基本線幅を持つ高性能SiNレーザーを報告する。

発表内容:

小型な光周波数コム光源として注目されているソリトンコムだが,低い変換効率が課題となっている.本論文では低い分散を持つシリコンナイトライド共振器をパルス励起することで,高効率・広帯域なソリトンコムを実現した.また,励起光のジッタがソリトンコムに与える影響を定量的に明らかにした.

発表内容:

本論文では、1つのレーザーで励起された微小共振器の周波数コム を、IMDD方式を用いて、高速データ伝送に使用することを示している。30Gb/sの NRZ変調方式と60Gb/sのPAM4変調方式で,それぞれ120Gb/sと240Gb/sのデータ伝 送を2kmの光ファイバで実現し,PSM4(Parallel Single Mode)やCWDM4(Course Wavelength Division Multiplex)のマルチソース協定で規定されている到達距 離,単一レーンのデータレート,アグリゲートデータレートを上回ることが確認 された。Back-to-backの特性評価と比較して0.1dBという極めて低い電力損失も 達成したことから、コストや電力に敏感なデータセンターのトランシーバー業界 において、CMOS対応の微小共振器の周波数コムを用いた高速データ伝送が実現可 能な技術であることを示しています。

発表内容:

メタサーフェスは,ナノ構造のサブ波長アレイで構成された人工材料であり,位相制御のツールとして多彩な波面エンジニアリングを可能とする.本論文では,非エルミートメタサーフェスの特異点近傍のトポロジー的な特徴を利用し,新たな位相制御のメカニズムを実証した.

発表内容:

シリコンマイクロリング共振器における共振周波数チューニングを,3Dプリントしたマイクロ流体チップを光回路に直接重ねて使用することで,消費エネルギーゼロで行う手法の実証を行った.実験には異なる濃度のNaCl水溶液を用いて,例えば10%程度のNaCl濃度では自由スペクトル領域以上の共振周波数シフトを達成した.

発表内容:

物理システムのトポロジー特性を制御することは、欠陥に強いデバイスや技術を開発するための基盤となる。本論文は、トポロジー、非密閉性、非線形性の相互作用によって基本的なダイナミクスが駆動され、調整されるフォトニックプラットフォームを提案した。レーザーで書き込まれた導波路を連続的に(「利得」)または分割して(「損失」)、界面欠陥に結合させたフォトニック格子を用いて、パリティ時間対称性の非線形制御と、非ヘルミティのトポロジー状態の非線形性による復元または破壊を実証した。このような概念は、強度に依存した利得や損失を持つ幅広い非ヘルミッティー系に適用でき、光を操作するための新しいアプローチを可能性を開く。

発表内容:

光ニューラルネットワーク(ONN)はカスケード的に接続されたマッハツェンダー干渉計(MZI)を用いて実装され,従来の深層学習のハードウェアの代替となる可能性がある.ONNは,従来の電気的なニューラルネットワークと比較して高いエネルギー効率と計算速度を実現するが,MZIによる大きなフットプリントを必要とする.この論文は新たにMZIの代わりにパリティタイム対称性を用いたカップラを使用することでその問題を解決し,MZIを用いた場合と比較してさらに高速かつ低エネルギーなONN実装の可能性を提案する.

発表内容:

マイクロ共振器で発生するモード同期したパルスである散逸性カーソリトンは通信や分光といった様々な応用が期待されている.しかし,基本ソリトン状態を決定論的に生成することは依然として難しい.本研究では,外部の連続波駆動ポンプに高エネルギーのパルストリガーを連続的に印加することで、基本ソリトン状態だけでなく複数ソリトン状態やソリトンクリスタル状態に決定論的に進化させることができることを理論的に示す.この方法は連続波ポンプ周波数をスキャンする必要がないためターンキーでソリトン発生ができる可能性がある.

発表内容:

ソリトンマイクロコムから52ラインのスーパーチャネルを実現し、80km伝送で10bit/s/Hz、2100km伝送で6it/s/Hzと高いスペクトル効率を達成した。マイクロスケールデバイスの出力から直接、コムの繰り返しに近いシンボルレートで広帯域波形を生成することの実現性と利点を証明した。

発表内容:

近年、散乱体を用いた波面成型は、収差のないサブ波長の集束などで、従来の光学系を超える光学操作を可能としている。しかし、散乱体の入出力測定が必要となり、測定の課題が実用へのハードルとなっている。ここで本論文は、事前に設計が分かっているランダムなメタサーフェスを用いてこの課題を克服する内容となっている。さらに、メタサーフェスを用いることによって、高開口数の焦点を約8mmの視野にまで拡張したイメージングを行っている。

発表内容:

SiO2マイクロトロイド共振器を用いた光MEMSに関して報告する.電極をパターニングしたWGM共振器を用いて,”capacitive tuning”による共振モードの高速なチューニングを行った.このようなチューニングは無線周波数から光周波数への効率的な周波数変換や光スイッチ等への応用が可能とする.

発表内容:

量子光,特にすべての自由度で区別できない相関光子ペアの光源は光量子計算やシミュレーションの基盤となる。このような光源は、近年、集積フォトニクスを用いて実現されているが、リング共振器のような単一の部品に依存しているため、生成された光子間のスペクトルおよび時間的な相関を調整する能力は限られている。本研究では,2次元アレイ共振器からなるトポロジカルシステムにおいて,デュアルポンプによる自発的4波混合を用いて,区別できない光子ペアの調整可能な光源を実現した.本研究では,トポロジカルエッジ状態の線形分散を利用してスペクトル帯域幅を調整し(約3.5倍),2つのポンプ周波数を調整することで生成された光子間の量子干渉を調整することができた。さらに、エネルギー-時間もつれを実証し、数値シミュレーションを用いて、この光源のトポロジカルなロバスト性を確認した。本研究の成果は、光量子技術を実現するための調整可能な周波数多重量子光源につながる可能性がある。

発表内容:

時空間軌道角運動量を持つ光(ST-OAM)は,最近発見された構造化された局所的な電磁場の一種であり,時空間の螺旋状の位相構造と横方向の固有軌道角運動量を持つ.本論文では,ST-OAMパルスの第2高調波の生成とその特性を明らかにした.また,この実験は従来の光の軌道角運動量に類似した,一般的なST-OAMの非線形性を示唆している。

発表内容:

本研究では,散逸性カーソリトンの非相反的制御を回転する微小共振器を用いて行う.ここでの非相反は,共振器の回転方向に進む光と逆方向に進む光ではSagnac-Fizeau optical drag効果により,異なるソリトンの状態を発生させることができた.この結果はソリトンによる光アイソレータや一方通行のソリトン通信に向けた有望な道を提供する.

発表内容:

本論文では,シリコンマイクロ共振器における誘導ラマン散乱と高次分散の影響を受けたブリージングダークパルスとラマン・カー・コムの発生について理論的に研究した.ダークパルスはラマン利得線幅に比べて比較的大きなFSRを持つマイクロ共振器でのみ存在する.また高次分散によって誘起されるダークパルスは,主に3次の分散係数の振幅と符号に依存し,その特性はラマンアシストによる四光波混合プロセスにも影響される.このような存在を知ることで,正常分散を示すマイクロ共振器におけるラマン・カー・コム形成に関連する不安定性の理解が深まり,実用化に向けてこれらの不安定性を回避することができる.さらに分散波を介して生成された広帯域のMIRマイクロコムは,共振器の製作の自由度を高め,正常分散が支配的なプラットフォームで周波数コムを獲得することを可能にする.

発表内容:

ニオブ酸リチウム(Lithium niobate: LN)は大きい2次非線形光学係数と3次非線形光学係数を持ち、様々な用途に応用がなされている。しかし、LNにおけるラマン効果と他の非線形光学効果との相互作用については未だ良く研究されていない。本論文ではLNを用いた微小共振器についてラマン効果を評価している。また、非線形光学効果によって発生する光カーコムを発生させ、光カーコム発生へのラマン効果の影響を評価した。

発表内容:

従来の半導体レーザーでは難しい低コストかつコンパクトで高ピークパワー(数十~数百ワット以上)の短パルス動作を可能にした2次元的に配置された利得部と損失部を持ち、損失部が可飽和吸収体で構成されているフォトニック結晶レーザー(またはフォトニック結晶面発光レーザー(PCSEL))を提案した。キャリアと光子の相互作用を考慮してPCSELの利得と損失の挙動を解析し設計を行い、実際に安定した高ピークパワー短パルス動作を可能にする構造を実証した。

発表内容:

電流を流すだけでソリトンコムを発生させることのできるターンキーソリトンは,昨年Natureで報告され大きな衝撃をもたらした.微小光共振器と半導体レーザを直接結合しセルフインジェクションロックを起こすことで,レーザは自動的にレッドデチューンとなり,レーザの波長をコントロールするための複雑な機構は不要となった.この論文では,今まで別々のチップ上に形成されていた,半導体レーザとシリコンナイトライド共振器を一枚の同じ基板上に形成することで,ターンキーソリトンのさらなる集積化に成功し,多波長光源としての実用化に大きく近づいた.

発表内容:

WGM微小共振器を用いた光周波数コムは、WDM伝送システムの高いスペ クトルとエネルギー効率を得る大きな可能性を秘めている。しかしながら、シリカ微小球の通信応用はほとんど研究されていません。本論文では、シリカ微小球 を用いた200GHzの光周波数コムの数値的な検討と最適化を行い、4チャネルWDM伝 送システムへの実装をシミュレーションしている。

発表内容:

偏光の制御は非常に重要な技術であり、様々な用途が考えられる。しかし、既存の偏光光学では、単一の横断面でのみ偏光を操作できる。本論文では、入射偏光に依存せず、伝搬方向に沿って任意の偏光応答を与える、新しいメタサーフェスを提案している。この技術によって、メタサーフェスの設計の自由度が増し、より多くの状況でメタサーフェスの使用が拡大する可能性がある。

発表内容:

液体による光学デバイスの作製は,魅力的な研究として注目されています.そのような光学デバイスの再構成可能な形状制御による周波数チューニングは液体本来の性質から困難とされていました.本論文では,インクジェット法を用いて水溶液表面に液体のみで構成されたWGMマイクロレーザを製作し,界面活性剤を用いて水溶液とWGMマイクロレーザ間の表面張力を制御することで,形状を再構成可能なままレージングの周波数をチューニングすることに成功しました.また,この手法を用いて,水溶性有機化合物のセンシングを行いました.本成果は,それのみならず,微小レベルでの流体センシング及びバイオセンシングへの応用が期待できます.

発表内容:

量子コンピュータは古典的なコンピューターでは扱いにくいと考えられている特定の計算を実行することができる.ボソンサンプリングはそのような計算の一つであり,本研究では50個の識別不可能なシングルモードスクイーズド状態を完全な接続性とランダム行列を備えた100モードの超低損失干渉計に入力し,100個の高効率単一光子検出器を使用してサンプリングすることで実行した.出力状態空間の次元は10^30になり,サンプリングレートは最先端のスーパーコンピューターを使用するよりも10^14速くなる結果を得た.

発表内容:

Exceptional Points (EP)を用いた非エルミート系は,フォトニクス,音響,光学,エレクトロニクスから原子物理学に至るまで,様々な分野で多くの特異な現象を引き起こす可能性を秘めている。本論文では,光パラメトリック発振器(OPO)を結合させた非エルミート系を紹介し,レーザの利得と損失に依存する従来の非エルミート系と比較してその利点を明らかにする。特に2つの結合したOPOによるスペクトルのパリティ対称性の破れを示し、その縮退動作と非縮退動作の間のEPを示す。

発表内容:

微小光共振器内で誘導ブリルアン散乱によるブリルアンレーザーを発生させ,同一共振器内でそのブリルアンレーザーを励起光とした散逸性カーソリトンを発生させる.
この手法では入力光は共振周波数に対しblue-detuning状態でブリルアンレーザーをred-detuning状態で発生させることができるため,レーザーピエゾによるシンプルな波長掃引でシングルソリトンにアクセスすることができる.また,生成されたブリルアンレーザーの超狭線幅と低ノイズ特性のために、観察されたソリトンは狭線幅のコム線と安定した繰り返し率を示す.

発表内容:

第5世代(5G)の無線アクセスネットワークにおいてはデータレート,消費電力,帯域等といった面でより良い性能が期待されているが,5Gにおける受動光ネットワーク(PON)に対してもこの点は例外ではない.
本研究では垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)の利得スイッチングによって生成した光周波数コムを用いて,エラーフリーであるデータ信号とクロック信号の同時伝送を実証した.これは,次世代波長分割多重方式の受動光ネットワークシステム(WDM-PON)への応用を目的とするものである.チャネル容量の向上と厳しい遅延の監視が求められる将来のWDM-PONにおいて,本研究の結果はVCSELによる光周波数コムが単純かつ省電力なネットワークを実現し得る光源として用いられる可能性を示唆する.

発表内容:

等間隔の時間パルスで構成されるソリトンクリスタルは,超高繰り返しを実現する有効な手段である.本論文では非線形モードカップリングの存在下でのソリトンクリスタル生成を検討した.適切な波動ベクトルのミスマッチと非線形結合係数の条件下では確実にパーフェクトソリトンクリスタルが実現できることを明らかにした.

発表内容:

本研究では,シリコンフォトニック細線導波路のために,大きなモードサイズを持つ新しいファイバーチップエッジカプラーアプローチを提案した.エッジカプラの構造は,SiO2上部クラッドに埋め込まれた複数の窒化シリコン層,湾曲した導波路,2つのスポットサイズコンバータ(SSC)部で構成された多重構造である.このエッジカプラは,波長1550nmでモードフィールド径(MFD)が8.2μmのSMF-28ファイバー用に設計されており,全体の結合率は90%となった.

発表内容:

量子コンピューティングの実用化への動きにより,量子アルゴリズムを実行するためのプログラマブルなマシンが急増している.本論文では集積ナノフォトニクス技術を用いて多光子量子回路を実行するシステムを紹介する.

発表内容:

微小光共振器上で発生させたソリトンコムをフォトディテクタによって検知すると,その繰り返し周波数に応じて数十GHzから数百GHzのRF信号を生成することができる.このようなRF信号はシグナルジェネレータを凌駕する位相ノイズ特性を示すため,次世代のRF信号源として期待されている.本論文ではさらなる高性能化を目指すため,位相ノイズの要因を数値計算と実証実験によって明らかにした.

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