研究テーマ

世界最小のパルスレーザの開発

光共振器と利得媒質を組み合わせるとレーザを作製できます.微小光共振器に利得を持たせることができれば,小さなレーザを開発することができます.そこで,ゾルゲル法と呼ばれる化学的なプロセスを用いて,エルビウム添加ガラスをシリコン基板上に作製し,エルビウム添加ガラスを加工して微小光共振器を作ることで微小なレーザを実現しました.

我々はこのレーザをさらに発展させてパルスレーザ発振させようとしています.そのためにはモードロックと呼ばれる手法が必要です.モードロックを実現するために,高速な応答を示すことが知られているカーボンナノチューブを共振器に付与してモードロックレーザを実現することを目指しています.これが実現できれば世界最小の超短光パルスレーザが得られると期待されます.

開発するモードロックレーザは出力の光パルス列の繰り返し周波数が100GHzを優に超えることが期待されるので,様々な応用が期待できます.特に,炭素繊維強化プラスチックなどの新素材の加工に威力を発揮する,高速なレーザ加工のシード光源として高い性能が得られることが期待できます.

エルビウム添加微小光共振器によるレーザ開発.パルスレーザ実現のための説明と,連続光発振の実験結果
エルビウム添加微小光共振器によるレーザ開発.パルスレーザ実現のための説明と,連続光発振の実験結果

ゾルゲル法は,化学的なプロセスなので,化学の知識も必要とされます.試験管を振りながら最適条件を見出すのは根気と時間がかかる作業です.また,湿度や気温にも左右されやすいので,一度条件を見出しても,その時々でレシピを調整する必要がある難しい作業です.

モードロックに必要なカーボンナノチューブをどのように合成し微小共振器に付与させればよいか等についても様々な検討が必要です.さらに所望の性能が得られているかの光学測定も簡単ではありません.

TEOSと呼ばれるゾルゲル法によるシリカネットワーク形成
TEOSと呼ばれるゾルゲル法によるシリカネットワーク形成

そもそも,これほど小さな共振器を用いてモードロックを実現させた例がないので,エルビウム添加量や必要なカーボンナノチューブの性能も明らかではありません.我々は厳密なモデルを立てて数値計算をすることで,設計パラメータを明らかにしつつあります.

このように,物理モデルの構築,コンピュータシミュレーションによるパラメータの検討,ゾルゲル法による微小光共振器作製技術の開発,カーボンナノチューブの合成や堆積など,検討事項が多岐にわたるので,チームとして役割分担しながら研究を進めています.

本研究は様々な要素技術が必要なので,実に多くの機関の協力を得ながら研究を進めています

エルビウム添加ガラスによるレーザ発振に関しては,Washington大学Lan Yang教授や化学科藤原教授のアドバイスを受けています.カーボンナノチューブに関しては,カーボンナノチューブのモードロックレーザ開発の第一人者である東京大学山下・Set研究室,合成のスペシャリストの物理情報工学科牧研究室と共同研究を進めています.

このレーザは高速なレーザプロセシングに用いることができる可能性があるので,株式会社アマダホールディングスの天田財団から支援を受けています.さらに,東京大学や理化学研究所をはじめとする多数の研究機関が参加している文科省Q-LEAPのプロジェクトにも参画しながら研究を進めています.

《 Keyword 》

微小光共振器 / カーボンナノチューブ / ゾルゲル法 / TEOS / 微小レーザ / モードロックレーザ / レーザ加工
田邉研究室では共同研究を積極的に進めています

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