研究テーマ
フォトニック結晶によるシリコン光集積回路
- 内容
フォトニック結晶とは光波長に対する人工的な結晶であり,半導体結晶が電子に対してバンドギャップを持つのと同じように,微細加工技術を駆使してフォトニック結晶と呼ばれるものを作ると光に対してバンドギャップを持つことができます.光に対するバンドギャップを利用して,光をチップ内に強く閉じ込めたり,光の速度を遅くすることができます.またサイズも極めて小さいので光集積回路の一つの有力な候補となっています.
フォトニック結晶はシリコンから作られることが多いので,現在のICトップとの相性も抜群で,光と電子によるハイブリッドな集積回路の実現も期待されています.シリコンフォトニクスとも呼ばれるこの分野は,光の得意なところと電気の得意なところをすみ分けつつも一つのチップ上に集積することで,高機能低消費電力な信号処理回路が実現できると期待できます.
これまでにシリコンフォトニック結晶の高い性能の微小光共振器の開発,全光スイッチ,電気光変調器,光検出器や,光分波器など光回路に次要となる要素素子の開発を次々と進めてきました.
- 技術のポイント
光の振る舞いを可視化するためにはFDTDと呼ばれる手法を用いてマクスウェル方程式を解く電磁界解析技術が必要になります.これには大規模な並列計算機を用いて計算をしなくてはなりませんので,プログラミングスキルも必要になります.解析も一度プログラムコードが完成すれば,あとはモデルをかえればよいだけではなく,対象が変わればその都度創意工夫が必要となります.
性能の高いフォトニック結晶微小光共振器をどのように作製し,作製誤差があっても動作する光回路をどのような組み合わせで実現するか.フォトニック結晶の設計は自由度が高いため,様々な組み合わせがあり,そのどれを選択すべきかは経験と光波工学の深い考察によってのみ明らかになります.
シリコンは優れた材料ですが,III-V族半導体と比較するとその性能は劣っている面も多いことが知られています.全てをシリコンで実現させるのか,適材適所で異なる材料とハイブリッド集積を目指すのか,それとも全く別のアプローチをとるのか,性能,コスト,技術的課題等,考えることは多岐にわたります.
- 研究プロジェクト
本研究は情報通信機構(NICT)や産業総合研究所(AIST)など,高度なナノ加工プロセス技術を有する国の研究所と協力しながら研究を進めています.2019年からは学生がNICTに常駐しながら研究を進めています.実際に自ら装置をオペレーションして素子を作製しています.また,海外のシリコンフォトニクスファウンダリを,他大学の研究者と利用しています.さらには,過去には田邉教授の古巣であるNTT物性科学基礎研究所との共同研究も進めていました.
素子作製に関しては新川崎にある4大学コンソーシアムのクリーンルームを用いても作製できます.このように,様々なチャネルを通じて,自分たちで作製したり外部の研究機関と協力したりしながら研究を進めています.
またシリコンによる光集積回路技術は量子コンピュータとの相性も良いとされているので,古典・量子の区別なく共通プラットフォームとして研究を大きく展開できる可能性を持っています.
《 Keyword 》
研究テーマ一覧
- 田邉教授の教育とは
- 田邉研究室の研究について
- 必見!研究室紹介ビデオ
- もっと深堀りTANABE Lab.
- 研究室の雰囲気がよくわかる!
- 2024年度配属者向け研究室説明会
2024年度配属生向けの研究室説明会を実施しています.オープンラボは自由に研究室に出入りしてください.また,いつでも個別説明会を受け付けます.
<開催中>
- 10/23(月) 16:30~ 説明会1回目 (場所: 14棟2階 DS43)
- 10/27(月) 18:00~ 説明会2回目 (場所: 14棟2階 DR8)
- 11/ 2(木) 16:30~ 説明会3回目 (場所: 14棟2階 DR7)
- 実験室見学・オープンラボ(随時実施中)
個別説明会・ラボツアー