CLEO 2022 菅野 凌

Research

CLEO 2022 参加報告

15th-20th May 2022, Convention Center, San Jose, USA

修士2年 菅野凌

1.CLEO2022について

本会議は APS( American Physical Society ),OSA( The Optical Society),IEEE Photonics Society主催の国際会議である.2021年はオンラインで行っていたが,2022年は ハイブリット開催であった.ハイブリット開催となったことで,オフラインとオンラインの長所を兼ね備えた学会となった.動画投稿,オンラインで発表できる点や,後日視聴可能という点ではオンライン開催の長所を,質疑応答といった会場全体の雰囲気に関してはオフライン開催の長所が出ていると感じた.会議自体の進行に関しても基本的に対面発表はそつがなかったが,オンライン発表に関してはマイクのトラブル等が一部発生したほどで基本的にスムーズに進行していた.また,協賛の方々のスペースは広く用意されており,日本企業や海外法人など見られた.

2.報告者の発表について

タイトル: Multi-Wavelength Reconstruction in a Compact (< mm) High - Resolution (< 0.1 nm) Random Photonic Crystal Spectrometer
発表者:Ryo Sugano
所属:Keio University
発表番号:SM3K(Mon, May 16)

導波路幅を徐々に狭くしたチャープ構造となっているフォトニック結晶導波路を用いた分光器に関して発表した.CMOS互換プロセスで作成したフォトニック結晶導波路はランダム性を持ち,局在光が上から漏れ出てくる.この局在光はアンダーソン局在の影響もあり非常に波長依存性があるため分光を行うことが可能である.質疑応答に関しては1つの質問は答えられず,もう一つの質問は意図が分かったが答えられるスライドを準備していなかったため残念な結果となった.前者の質問をしてくださった方は先行研究のスライドの際に載せていた著名な方だったため,非常に光栄なことである.

3.聴講した発表

タイトル:Photonic integrated erbium-doped silicon nitride amplifiers with intense net gain
発表者:Yang Liu
所属:Swiss Federal Instituteof Technology in Lausanne (EPFL)
発表番号:SM4G.4(Mon, May 16th)

イオン注入によりErを直接ドープした長さ 0.5 mのSi3N4 導波路において、入力信号電力約 0.1 mWに対して過去最高の 26 dBのオンチップ純増を実証した.従来の手法では成膜やマルチレイヤーに堆積させ行っており,0.1 dB/cm以下の超低伝搬損失を維持することが難しく実用的な利得性能に達していなかった.本研究はダマシンプロセス中にErイオンを注入し,エアクラッドにすることで作成された.今後の研究を考えるとチップでの信号増幅は必須であると考えられるため,非常に重要だ.

タイトル:Beyond 100Gb/s From a Single Silicon MZI modulator
発表者:Graham Reed
所属:University of Southampton
発表番号:SM5G.1(Mon, May 16th)

チップスケールでの送信機に必要な変調器を歴史と共に振り返るチュートリアル発表.ビットレートも重要であるが,省エネを証明するためには変調器の変換パワー,挿入損失が重要である.また,1つの素材に全て載せるのか,ワイヤボンディングするかによっても変調器の形の最適化が必要である.今後変調器を作成する際に参考となる研究について述べられており,興味深いセッションだった.

タイトル:What’s Next in Integrated Photonics – Hot Topics at CLEO 2022
発表者:Joyce Poon
所属:Max Planck Institute for the Microstructure Physics/University of Toronto
発表番号:SpE4(Tue, May 17th)

近年注目されている集積光学分野にて,中核の素材となっているSiNやLiNbO3の素材 についてファブリケーションの会社の情報を中心にした発表だった.SiNではLigentec のファブリケーションについて詳しく述べられていたため,今後さらなるSiN研究の激化が予想できる.またCLEOのセッションにて珍しくOpticaのメンバー限定のセッションであった.

タイトル:Ultra-Compact Semiconductor/Solid-State Vertically Integrated Laser Over kW Peak Power
発表者:Masanao Kamata
所属:Sony Group Corporation
発表番号:JTh6B.3(Thu, May 19th)

量子多重井戸による半導体レーザ媒質と固体レーザ媒質を組み合わせた全集積チップスケールパッシブQスイッチレーザに関する研究である.従来の垂直共振器型面発光レーザー(VCSEL)は活性領域の体積が小さく,大出力化にはレンズ等複雑な系が必要であった.今回はYb:YAGとCr:YAGを共振器内部で結合させることでQスイッチとして機能させている.ポストデッドラインプレゼンテーションなこともあり,遅い時間ながら,人も多く興味深いセッションであった.