CLEO2013 鈴木 良

Research

CLEO:2013 学会報告書

田邉研究室 修士1年 鈴木 良

2013年6月20日

【 概要 】

2013年6月9日から14日にアメリカ合衆国のサンノゼで開催されたCLEO:2013 (Conference on Lasers and Electro-Optics)においてポスター発表を行い,また関連研究についての発表を聴講した.またスタンフォード大学の山本研究室を訪問した.これらの学会参加報告を行う.

【 CLEO:2013について 】

学会が開催されたサンノゼはHewlett-Packardをはじめとする世界有数のIT企業が集積するシリコンバレーの中心都市であり,街並みが美しく,治安も良好であるように感じた.アメリカ本土への渡航は初めてであったが,比較的安心して学会に参加することができた.発表されている内容については,日本の学会ではほとんど無い微小光共振器についての話題が多数あり,世界の研究者の研究速度の速さやそのレベルの高さを肌で感じることができた

鈴木 良

【 発表(ポスター)報告 】

“Octagonal toroid microcavity for mechanically robust coupling with optical fiber”という題目でポスター発表を行った.時間帯が18:30-20:30と遅い時間であったこともあり,会場の隣には食事やアルコールが用意され和やかな雰囲気でディスカッションが行われていた.自身のポスターには2時間で15人ほどの聴講者が訪れ,彼らのシリカトロイドについての予備知識は平均すると,詳しくはないが聞いたことはあるという程度であった.想定される質問の返答はテンプレートとして覚えて臨んだため,聴講者に質問されたことに対して答える,という最低限のラインは超えることができたと感じている.ただし,英語が不自由であるために深いディスカッションを行うことはできなかった.例えばOptomechanicsについての応用の可能性を質問されたがそのレスポンスを上手く表現できず非常に心残りとなっている.修士課程の間に再び国際学会に行く可能性は十分に考えられるので,今後も英語の向上を心掛けていきたいと考えている.

鈴木 良

【注目した研究】

QM1A.4 Xiao Group “Ultralow-threshold cavity Raman laser via free-space excitation”
トロイド共振器を用いたラマンレーザの実験である.ラマンレーザは2002年にVahala Groupが発表したように新規性のあるものではないが,本研究のポイントはテーパファイバを用いない結合方法にある.タイトルにfree-space excitationとあるように,下図のように光をレンズで集光することで入出力を行っている.このときトロイド共振器が円形であると入力と出力の方向が異なり,この方法を用いることができない.そこでわざと歪みを生じさせることでその方向を制御している.ただし,この歪みを生じさせていても108オーダーのQ値は達成されている.

ATh5A.1 Bergman Group “Simplified Platform for Microring-Sensing using Wavelength Locking”
本研究はポストデッドラインとして発表されたものである.光共振器のセンシング応用は,対象となる粒子などが付着することで生ずる共振波長のシフトを観察して行われる.その観察にはこれまで波長可変レーザや広帯域レーザを用いる方法がとられてきたが,ここでは単一波長のレーザを用いる方法が提案されている.その仕組みはシリコンマイクロリング共振器に電圧制御のヒーターが取り付けてあり,熱によって共振波長が制御できるようになっている.下図のように単一波長のレーザは共振波長からΔλ0だけずらして入力しておき,ヒーターにより共振波長を変化させて光が結合するまでの波長変化を測定する.つまり対象物が付着していなければΔλ0変化させると結合し,対象物が付着していればΔλ0-ΔλRS変化させると結合が起こる.このΔλRSが粒子付着による波長シフトであり,電圧の大きさにより判断している.

QTh4E.3 Kippenberg Group “Soliton mode-locking in optical microresonators”
光周波数コムについての発表が数多くあった中で,昨年末からのトレンドがこの共振器内でのソリトンモードロックであろう.短波長から長波長にsweepして結合すると,ある点からノイズが低減されモードロックがかかる.発表の半分は同グループから2012年に発表されたNature Photonics “Universal formation dynamics and noise of Kerr-frequency combs in microresonators”についてであり,この論文の理解が重要であることが伺えた.