微小光共振器を用いた全光論理ゲートの構築

Research

微小光共振器を用いた全光論理ゲートの構築

理論的解析と実証への課題の提示

微小光共振器を用いた論理ゲートなどの全光デバイスは,低消費電力や信号の多重化等のメリットから実現が期待されていますが,いまだ複雑な光回路は実証には至っていません.そこで本研究では入出力の波長が一致し,さらにすべての共振器の持つ共振波長が共通であるなどの実際にシステムを構築する上で理想的な全光論理ゲートの構成を提案し,動作を数値的に実証しました.

今回提案する残光論理ゲートの基本素子は,Fig. 1に示すadd-drop系のマイクロリング共振器です.本素子を用いた光スイッチの原理を紹介します.λ1は光が入力しないときには共振器波長とはずれていますが,入力をONにしたときには光カー効果により共振器の共振波長がλ1と一致するようになり,入力λ1光はdrop側に出力されます(Fig. 1(左)).λ2のみがONのときは,共振周波数からの離調が大きすぎるために,光が共振器中に光が入らずそのまま透過してしまいます(Fig. 1 中央).しかし,λ1とλ2とがともにONのときには,最初に共振周波数がλ1と一致するようになり,その結果λ2の光も共振器中に入るようになるために共振周波数がさらに変調されλ2と一致するようになり,今度はλ1の光はそのまま透過し,λ2の光がdropされるようになります.

Fig. 1 Operation principle of a Kerr swich based on microring cavity

我々は,Fig. 1の基本素子を組み合わせて構成したNANDゲートの解析をおこないました.共振器は全て同一設計としており,論理ゲートを構築するための設計パラメータは共振器の組み合わせ方と共振器導波路間の結合のみです.構成をFig. 2(a)に示し,動作検証結果をFig. 2(b)に示します.Fig. 2(b)は回路への入出力を示しており,所望のNAND動作が実現できていることがわかります.今回の研究では,提案した回路の作製誤差の影響や,入力パワーの揺らぎ耐性についても,このような光論理回路に対しては世界で初めて検証しました.このように,実証実験をにらんだ設計が行われた例はこれまでになく,我々はさらに揺らぎ耐性の高い構造を探していきます.

Fig. 2 (a) Photonic circuit design of a NAND gate. (b) Input and output waveforms calculated by CMT.

本研究の成果はOptics Express 22, 4466-4479 (2014)に掲載されています.