四光波混合と誘導ラマン散乱を介した広帯域な第三次高調波発生

Research

四光波混合と誘導ラマン散乱を介した広帯域な第三次高調波発生

オンチップ可視光源の広帯域化に向けた提案

私たちの身の回りには様々な可視光源があります.レーザポインターやLEDライト,照明灯まで目に見える光を出すデバイスはすべて可視光源といえます.白色蛍光灯は青から赤まで様々な色が混じり合っているものですが,レーザは純粋に一つの波長を出すことのできる非常に優れた光源です.私たちが作製する微小光共振器にレーザ光を入力することで,波長1550 nmの不可視光(レーザ光)から,波長517 nmの緑色の可視光に変換することが可能となります.これは第三次高調波発生とよばれるもので,周波数が3倍(波長が1/3)に変換される物理現象です.今回,私たちは誘導ラマン散乱と四光波混合と組み合わせて第三次高調波発生を引き起こすことによって緑(498 nm)から赤色(611 nm)までの広帯域な可視光への変換を確認しました.誘導ラマン散乱や四光波混合も波長変換の一種ですが,まずこれらの現象が起こることにより,近赤外光であるレーザ光の周りで異なる波長の光が発生します(左図(a)(b)(c)).これらの新たな光が第三次高調波発生を起こすことで最終的に様々な波長をもつ可視光に変換されました.(右図(a)(b)(c))

共振器の材料であるシリカガラスは誘導ラマン散乱が起きやすい材料であることが今回の広帯域な可視光発生のキーとなりました.

直径100μm程度のシリカ微小光共振器を用いることで,ある一つの波長のレーザから様々な色の可視光が同時に生じることができることを実証することができました.これらの結果はチップサイズの可視光源や可視光波長変換器といった将来的な応用へ向けた第一歩となることが期待されています.

本研究はOpt. Express, Vol. 24, No. 23, pp. 26322-26331 (2016).に掲載されています.
本成果の一部は科研費(#15H05429)及び最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラムの援助を受けました.