FiO 2017 上岡 直隆

Research

OSA FRONTIERS IN OPTICS (FIO) 参加報告

修士1年 上岡直隆

1.概要

9/17~21にアメリカ合衆国ワシントンDCにて行われた国際会議Frontiers in Optics/Laser Science (FiO/LS)に参加した。米国光学会が主催する学会で、毎年米国内の各地で開催されていたが、今年以降数年間はワシントンDCのヒルトンホテルでの開催が決定しているようであった。口頭発表に比べポスター発表の割合が多かったが、その分モニターを用いたE posterや、各ポスターセッションの中でも選ばれた発表だけが5分間で概要を伝えるRapid fire oral presentationといった新しい試みも多く、そのおかげもあってかポスター発表も活発に行われていると感じた。

学会主催のレセプションパーティの様子
学会主催のレセプションパーティの様子
会場近くにはOSA本部もあった.
会場近くにはOSA本部もあった.

2.発表に関して

自分からは、作成したFDTDによるスローライト効果を用いた磁気光学効果の増幅、ひいては光アイソレータの性能向上の可能性についての数値解析検討を発表した。10数人から質問や意見などを頂けたが、英語による返答以上に、英語の質問の意図や内容を理解するのに苦労する場面や、単純に自分の知識不足などを実感する事が多かった。質問としては、予想通り結果そのもの等よりもFDTDについての質問が多く、何を使っているのか(LumericalやMEEPなのか)、従来のものから具体的にどう・なぜ修正したのか、といった質問が多かったが、他の計算手法との比較や現象について理解が深めることができた。

3.トピック報告

I. Palstra, D. Kosters, F. Alpeggiani, and K. Kuipers, “Extreme Twists of Light in Photonic Crystal Waveguides,” in Frontiers in Optics 2017, OSA Technical Digest (online) (Optical Society of America, 2017), paper JW3A.54.
カイラリティのある分子のセンシングを目的として、非対称なフォトニック結晶導波路中で光を“スーパーカイラル”にした、という研究。導波路側面のホールをずらすことで、円偏光において±1となるカイラリティ指標Cが1より大きくなる“スーパーカイラル”な電界分布を得ていた。通常のフォトニック結晶導波路でも側面の電界はCが1以上の大きなカイラリティを示しているが、導波路に対し対称なため総計で0となってしまうため、ホールをずらすことで全体としてカイラリティが得られるようにし、シミュレーションでは24倍のCを得ることに成功したとのことであった。
材料センシングを目的としているため、ポスターでは導波路の20nm上での電界Ex,Ey,Ezプロファイルを示していたが、そちらでは大きな導波路非対称な電界分布が表れており、自分の研究のように導波路の上に磁気材料を張り付ける場合にも応用ができるのではないかと思い、とても興味深かった。今後実際に構造を作製して実験するつもりとのことだったが、ポスターに通常のフォトニック結晶導波路を作製した、との報告を載せており、非対称な提案構造の作製に苦労しているとのことだったので、どうやらフォトニック結晶導波路の作製にはあまり強くないようであった。

T. Crane, O. Trojak, and L. Sapienza, “High-Q Optical Cavities at Visible Wavelengths in Photonic Crystals in the Anderson-localized regime,” in Frontiers in Optics 2017, OSA Technical Digest (online) (Optical Society of America, 2017), paper JW3A.50.
シリコンナイトライドのフォトニック結晶中において可視光域でアンダーソン局在を起こすことで10の4乗程度の高Q値を達成した、という発表。2Dフォトニック結晶構造では、長波域より構造の不完全性などがクリティカルになるためこれまでSiNでは3乗程度しか達成されていなかったQ値を、逆に構造不完全性によるアンダーソン局在を用いることで10倍大きくしている。具体的には、導波路近傍3列のホール位置(格子定数)を標準偏差のガウス分布でずらしているらしく、その結果Q値の向上が見られていた。SiNを用いているのはナイトライドのフォトルミネッセンスを利用して可視光域特性を見たかったためであり、原理的にはただのSiなどでも利用できる、との事であった。また、当然位置ずれを大きくし過ぎると面外反射が増えQ値が下がるとの事であった。発表自体はあまりインパクトを感じるものではなかったが、可視光域についての見地があまりなく、またアンダーソン局在についてあまり理解が深くなかったので、勉強になった。

C. Chen, X. Guo, X. Ni, and I. C. Khoo, “Observation of New Mechanism for Slowing Femtosecond Pulses by Liquid-Crystalline Chiral Photonic Crystals,” in Frontiers in Optics 2017, OSA Technical Digest (online) (Optical Society of America, 2017), paper FW6B.3.
コレストリック液晶フォトニック結晶によるレーザ発振で、バンドエッジにおける効果以上のスローライト効果を観測した、という発表。レーザの波長をフォトニックバンドギャップ中に設定することで大きなスローライト効果を得れるだけでなく、パルスの広がりも回避できる、との事であった。”Novel Studies of Waveguides, Lasers and Atomic Interactions”という新規現象などについてのセッションの発表であり、この研究でもどうやらスローライト効果が得られる原理などは今だはっきり分かっていないようであったため、あまりはっきりとした理解は得られなかったが、普段フォトニック結晶導波路において利用しているバンドエッジ以外でのスローライト効果という物は興味深いと感じた。