結合共振器系を用いたブリルアンレーザ

Research

結合共振器系を用いたブリルアンレーザ

マイクロ波フォトニクスの小型化に向けて

光の周波数は通信波長帯でよく用いられる1550nmだと193THzであるのに対し,マイクロ波の周波数は一般にGHz帯と大きく異なっています.今回の研究では,光をマイクロ波に周波数変換させるためのシステムをオンチップで実現可能であるということを実験的に示したという研究になります.
ではなぜ光を介してマイクロ波を発生させる方法が必要なのでしょうか.マイクロ波をそのまま伝送しようとすると,同軸ケーブルによる伝送損失が大きいために遠距離伝送が実現できません.また水晶振動子などで電気的にマイクロ波を発生させようとするほど,発生させるマイクロ波の周波数が大きいほど,ノイズが大きくなってしまうという問題があります.
そこで近年,これらの問題を解決するために,光学的にマイクロ波を発生させる研究が多く行われてきています.光からマイクロ波を発生させる方法は,周波数が異なる,位相の揃った2つの光波をフォトディテクタで検知することで,その周波数差に対応したマイクロ波が得られるという仕組みを利用しています.この方法を用いることで,光ファイバでの伝送が可能になるので,遠距離伝送が可能になります.
これを実現するには,”位相の揃った”2つの光を用意することが重要です.これが低ノイズ化につながります.これを実現する方法の1つとしてブリルアンレーザがあります.ブリルアンレーザというのは誘導ブリルアン散乱を増強するような系のことをいいます.誘導ブリルアン散乱を効率的に起こすためには,高強度な光強度を微小な空間に閉じ込めることが必要であり,これを満たすために光共振器が用いられます.先行研究では単一の共振器でのブリルアンレーザは実証されていましたが,共振器のサイズを正確にコントロールする必要性があり,また共振器のサイズもmmサイズと比較的大きなものでした.そこで今回の研究では,2つの光共振器を用いることで,この作成プロセスの困難を取り除き,より小さな系(100 μm)でブリルアンレーザを実現することに成功しました.

図1:結合共振器を用いたブリルアンレーザ

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図2:実験結果

本成果の一部はMEXT科研費(JP15H05429)の援助を受けました.
本研究は Appl. Phys. Lett., Vol. 112, pp. 201105 (2018)に掲載されています.