高Q値単結晶微小光共振器による広帯域パラメトリック光発生

Research

高Q値単結晶微小光共振器による広帯域パラメトリック光発生

波長変換素子の広帯域化へ向けて

近年,高性能な微小光共振器素子の研究開発が世界中で盛んに行われています.ここでいう高性能とは「どれだけ長い時間光を閉じ込めることができるか」ということを意味します.微小光共振器に長い時間光を閉じ込めると,光と物質間の相互作用によって非線形波長変換とよばれる現象が発生します.非線形波長変換は身近な例では緑色のレーザーポインターなどに使われています.ところで世の中には自由自在に好きな波長(色)が出せる便利な材料やアイテムはなく,長い研究の末に開発されてきたという歴史があります.青色で発光するLED技術で日本人の先生がノーベル賞を受賞したのも記憶に新しいかもしれません.そこで簡単に出せるAという波長の光から,出すのが難しいBという波長の光に変換してくれる変換器があればいいのですが,それこそが波長変換素子とよばれるものです.

今回,私たちはフッ化マグネシウムで作製した高Q値微小光共振器素子を用いて,1オクターブを超える広帯域波長変換を実証しました.具体的には波長1550.56 nmの励起光を共振器素子に入力することで,1140nmと2425nmという2つの波長の光を同時に発生することができました.また,励起波長を変化させることで,発振波長のチューニングが可能なことを示しました.一般的にこれほど広帯域な光波長変換は容易ではなく,最も重要な共振器の構造は有限要素法とよばれるシミュレーションにより決定し,作製には最先端の機械加工技術を用いました.この結果は微小光共振器の波長変換素子としての高いポテンシャルを示すものであるといえます.この技術をさらに発展させることで,将来的にレーザ加工や光通信をはじめとする様々な応用が期待されています.

左図:実験時の写真.赤丸で囲った小さな部分が直径約500マイクロメートルの微小光共振器.
右図:実験で観測された光スペクトラム.挿入図は実験セットアップを示す.

本成果の一部は日本学術振興会(JP18J21797)特別研究員奨励費,天田財団,文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラムの援助を受けました.
本研究は Opt. Lett., Vol. 44, No. 12, pp. 3146-3149 (2019)に掲載されています.