多角形トロイド微小光共振器の開発

Research

多角形トロイド微小光共振器の開発

光を閉じ込める容器に光を出し入れする

田邉研究室では,光を強く閉じ込めるシリカトロイド微小光共振器を多角形状で実現しました.等方性エッチング,異方性エッチング,レーザリフローを組み合わせることで構造を作製し,測定をおこなう段階まで進んでいます.

従来のシリカトロイド共振器は非常に性能が高い反面,円形状であるがゆえにテーパファイバとの結合効率の制御に乏しいという欠点がありました.今回開発した8角形状シリカトロイドは,結合長を長くとれるため安定した結合効率が期待でき,なおかつ角部分がスムースなため性能も高く保たれます.シリカトロイド共振器を用いた,光周波数コムや微粒子検出などのアプリケーションを実用化する上で安定な結合というのは重要な要素です.

本成果では,(1)シリコン犠牲層エッチングとして異方性エッチャントであるKOH(水酸化カリウム)を採用し,かつ等方性エッチングと組み合わせることで構造を作製しました(図1).FDTD法による解析を実施し,Q = 8.8×106を得ました.さらに結合に関して,辺部分と角部分を使い分けることでも結合効率を制御することが可能なこともわかりました(図2).

本研究の一部は戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE) の委託研究として実施されました.また,東レ科学技術研究助成,慶應義塾大学次世代研究プロジェクト推進プログラムの支援を受けました.

図1:多角形シリカトロイド微小光共振器の作製手順
図1:多角形シリカトロイド微小光共振器の作製手順

(a)通常のシリカトロイド微小光共振器の作製プロセス (b)8角形シリコンポスト形成までの光学顕微鏡写真(上面図).ガラスは透明なためシリコンポストが見える.(c)レーザリフローによって導波路部が形成された8角形シリカトロイド微小光共振器.

図2:結合係数と共振器-ファイバ間のギャップの関係
図2:結合係数と共振器-ファイバ間のギャップの関係

赤点が共振器の辺部分を,緑点が共振器の角部分を結合に利用した場合です.同じ共振器にも関わらず,その結合係数は大きく異なります.これを利用すれば従来はギャップのナノメートル調整でしか制御できなかった結合効率を接触点によっても制御することが可能です.

本成果は,Applied Physics Letters 101, 121101 (2012)に掲載されています.