OSA(FiO/LS) 2016 岡部 悠介

Research

2016 Frontiers in Optics / Laser Science 報告書

岡部 悠介

1.学会について

2016 年の Frontiers in Optics / Laser Science は 10 月 17-21 日にかけてアメリカ・ロチェスター( NY 州)で開催された.アメリカ五大湖のオンタリオ湖岸に位置しており,全体的に木々が多く閑静な街並みが広がっているのが印象的であった. 10 月後半ということもあり紅葉がきれいで空から見える景色は壮観であった.この時期は東京の冬並みに寒いのが平年であるが,今年はアメリカ全土でも(記録的な)温暖傾向にあり最終日あたりを除いて連日 20 度以上と,日によっては半袖で十分なくらい暖かかった.
今年の OSA は 100 周年とあり全体としてかなり気合が入っていたように見えた.特に Lipson と Boyd の全体講演やアメリカでミリオンセラーであり物理学者である加來道雄の招待講演は面白く聞き入ってしまった. 他にも招待講演では Weiner やKippenberg など有力な研究者を多く見かけた. 本報告では自分の発表の反省と聴講した関連研究でも特に印象に残ったものを紹介する.

2.自分の発表について

[JW2A.150] Numerical modeling of the generation of a Kerr comb in a coupled cavity system using coupled mode equations
20 日午前にポスター発表を行った. 開始直後から数人の人がポスターの前におり,主にモデルについて質問を受けた.説明としては大体うまくできたと思うが,もっと簡潔に説明できたし, 深く突っ込んでもらえるようにできていなかったと痛感している.特に結合項については興味をもってもらえたように感じた.その後は理論系の人からいくつか質問を受け,途中 NTT 研究所の方がいらしてお話をした程度で,ソリトン関
係の人は来なかった. ダークソリトンの挙動についてディスカッションしたかったこともあり,そこは少し残念である.最終的にそれなりに人は来たので,結合共振器に関しての注目度はそれなりにあるのではないかと感じた. ポスターセッションの全体的な雰囲気として, 活発に議論をしているというよりは,面白そうなポター発表の前で話を聞くという感じであった.

3.関連発表

[FTh4G.3] Photonic-chip based widely tunable microwave source using a Brillouinopto-electronic oscillator
光‐電気発振器をフォトニック結晶でのブリリュアン散乱( SBS)を使って実現した報告. SBS は通常導波路長が長くないと十分なゲインが得られないが,フォトニック結晶の高屈折率,小さいモード面積,低損失な伝搬によってガラス SMF の 500 倍のゲインが得られることを利用している.この方法で特に低周波において市販品よりもノイズが少ない結果が得られた.また RF 周波数の分解能は 3 MHz であったが,この方法では 2 つのレーザの差周波を出力しているため,原理的にはレーザ次第でもっと細かい調整が可能であるとのことであった(未検証).

[FTh4G.4] Asymmetric Light-Light Interaction by Non-Hermitian Photonics
非ハミルトニアン‐Si フォトニック結晶を使うことでアイソレータを実現した報告.おおよそラダー型であるがホールの部分は Ge/Cr を用いている. リファレンス光のON/OFF で伝搬をコントロールしているが,構造としてはとてもシンプルであるのに非対称な伝搬が現れることは非常に驚いた.

[FTh4G.7] On-chip Turing pattern formation for coherent high-power THz radiation
ソリトン状態よりもチューリングパターンの状態の方が四光波混合のパワー変換効率が良く摂動に対してロバストであることに注目した報告. コヒーレンスもよくゆらぎも±1 MHz 以内に収まり RF ノイズはない.ソリトンに注目するのではなくチューリングパターンに注目するという,発想の柔軟さが大事であることを改めて思い知らされた.

[FTu3I.1] The Inviscid Burgers’ Equation in Nonlinear Fiber Optics
流体力学によく用いられる Inviscid Burgers’ Equation を非線形ファイバ光学に応用した報告.パルスの包絡線が弱い(正常)分散を伝搬すること(例えば分散長が非線形長より十分長いこと)が条件であるが, NLSE よりシンプルな方程式であるにもかかわらずほぼ変わらない結果を示している.波の伝搬に使われる方程式なのでソリトン形成などの目的には適さないが,新たな導波路の作製をした時には使うこともあり得るか.