APS March Meeting 2016 鈴木 良

Research

APS MARCH MEETING 2016 報告書

期間: 2016 年 3 月 14 日-2016 年 3 月 18 日
場所: Baltimore Convention Center, Baltimore, MD, USA
目的: 成果発表、発表聴講、及び National Institute of Standards and Technology (NIST) 訪問

1.学会について

学会の開催されたボルチモアはワシントン DC から1時間ほどの場所に位置し、インナーハ ーバーと呼ばれる海岸沿いの散歩は非常に気持ちが良かった。ただし、海岸沿いから離れて少し内陸に入ると治安が悪くなるので、ボルチモアの学会に参加する際は会場近くのホテルに滞在するのが賢明である。APS March meeting は日本でいう物理学会に相当するらしく規模が非常に大きい学会であった。発表は光関連の研究は少なかったため、田邉研究室からは cavity optomechanics などに重点を置いた研究ならば投稿を検討しても良いかもしれない。
学会初日の午前中の Nanomanufacturing and Optical/Laser/High Frequency Devices というセッシ ョンで口頭発表を行った。光関連の研究を寄せ集めたようなセッションであり、光コムに関する発表を行ったのは私だけであった。前後の発表内容を調べて光コムに詳しくない人にも伝わりやすくすべきであった。質疑応答は非常に簡単な質問であったため特に問題なかった。

2.聴講した発表内容

[A51.00004] Monolayer Tungsten Disulfide Laser
グラフェンの研究において層状物質の層数を単層化することで新しい物性が得られることが知られている。これは同様に遷移金属ダイカルコゲナイド(MoS2や WS2 など)にも適用され、単層化することで間接ギ ャップから直接ギャップへ変化する。単層の遷移金属ダイカルコゲナイドを付加したフォトニック結晶や分布ブラッグ反射微小光共振器において、自然放出光の増大が報告されているが、コヒーレント光放出は報告されていない。本発表は単層 WS2 を WG ディスク
型共振器に埋め込んで、二次元励起子レーザを可視光波長で実現したという報告であった。

[F48.00013] Controllable frequency comb generation in a tunable superconducting coplanar waveguide resonator
光カーコムは赤外ポンプ光を共振器に入力することで四光波混合を介して発生させるが、その発想をマイクロ波領域で超伝導の共振器を用いて行ったのが本研究である。共振器は厚み 50 nm のネオジウム材料を用いて作製されておりマイクロ波発生器から発生させる。特に周波数間隔を 5 Hz – 5 MHz、中心周波数を制御することが可能であり、その帯域は 100 MHz 程度(コム線20 本)である。東京大学と理研も共同研究先として出ていた。

[A51.00012] High efficiency on-chip three wave parametric frequency conversion and its applications in both classical and quantum optics
基板上に作製される微小光共振器は χ (2)非線形効果の発生に有用と考えられるが、集積デバイスを用いたコヒーレント photon-photon interaction (三光波の周波数変換)は未だ報告されていない。一般に設計の自由度と高い非線形性を両立するデバイスの実現が難しいと考えられるが、本研究ではアルミニウムナイトライドを用いることで低損失・高非線形性・微小サイズの共振器を作製してこれを解決した。通信波長帯と可視光帯の両帯域に適した設計により高い χ (2)非線形性を実現し、その効率は縮退変換が 3 MHz/mW、非縮退変換が 5.8 MHz/mW であった。

3.National Institute of Standards and Technology (NIST) 訪問

Dr. Marcelo Davanço のご厚意によりワシントン DC 近くの NIST (アメリカ効率標準研究所)を訪問させて頂いた。主にシリコンやシリコンナイトライドの導波路・共振器を用いて、共振器オプトメカニクスや量子光学の研究を行っており、実験室とファブリケーションセンターを見学した。今回が初めての(大学以外の)研究機関訪問であったため他所との比較は出来ないが、機器の配置や実験系の設計などがよく検討されており、スペースを効率的に利用しているように思えた。近年では微小光共振器の光学モードマッピングやブラッグ反射四光波混合などの興味深い研究を発表しているようだ。( http://www.nist.gov/cnst/davanco.cfm )

鈴木 良