CLEO/Europe-EQEC 2017 渕田 美夏
Research
CLEO®/Europe-EQEC 2017参加報告
修士1年 渕田美夏
1.参加会議
2017 Conference on Lasers and Electro-Optics Europe & European Quantum Electronics Conference (CLEO/Europe-EQEC 2017)
日程:2017年6月25日 – 6月29日
場所:International Congress Centre Munich, Germany
2.CLEO/Europe 2017について
CLEO/Europeは1994年にアムステルダムで初めて開催されてから,ハンブルク,グラス ゴー,ニースに続き,2003年からはミュンヘンで2年おきに開催されている,オプティク ス・フォトニクスの研究者やエンジニアにとってヨーロッパで最も大きくて名声のある学 会である.今年の学会では日曜日から木曜日の 5 日間に亘る日程の中で,レーザーサイエ ンス,フォトニクス,そして量子エレクトロニクスなどの研究分野から,1700を超える口 頭発表とポスター発表が行われた.ホテルから歩いて 5 分程のミュンヘン中央駅で一日乗 車券を買い,地下鉄U2の終点一個手前のMessestadt Westで降りると,人工池の横を通って大きな会議場へと向かう.12 程度の大小の会場において口頭発表が並行してなされ,参 加者は各々の興味のある発表を聞こうと会場を行き来していた.毎日ランチ休憩の後にポ スターセッションがなされ,30 分のコーヒー休憩や 18 時以降のハッピーアワーやカンフ ァレンスディナーも企画された.学会のすぐ隣の展示会では加工/測定問わず光やレーザー 関連の企業が巨大な5会場にひしめき合い,活気づいていた.
3.参加者の発表について
CK-5 Whispering gallery resonators というセッションでCK-5.3 “Dispersion Tailoring of a Crystalline Whispering Gallery Mode Microcavity for Optical Kerr Frequency Comb Generation”と題して 15 分間の口頭発表を行なった.セッションの始めに Lan Yang が Microcavity とはと応用を紹介する 45 分間のプレゼンテーションを行ない,多くの聴講者 が熱心に聞いていた.続いてon-chipのリング型共振器のクラッド部に熱硬化性のある層を つけておき,作製後も共振周波数を変えられるという研究の発表がなされた後,セッション 時間残り12分しかない状態で壇上に上がった.ここまでに緊張しているつもりはなかったのだが,発表開始の最初の 3 スライド程は噛み噛みで手も震えていた.しかし後半は自分の言葉でしっかり伝わるように発表できたと思う.質問は聴講者の方から共振器の表面粗さが一緒なのに手研磨と超精密加工でQ値が変わる理由は何かと聞かれ,表面粗さの値が必ずしもQ値を決定づける因子ではないのかもしれないと考えていると答えた.後から考えると,同じ表面粗さでもクラックがあるかないかでQscatが変わると言うべきであった.日頃から感覚で実験/検討するのではなく,定量的に,せめて定性的にでも,しっかり根拠を提示できるように頭の中を整理していかなければならないと気付かされた.
3.関連発表
CD-7.4 Piezo-Tunable Second-Harmonic-Generation in a Whispering-Gallery Resonator (Christoph S. Werner, Freiburg Uni.
この研究は,ピエゾ素子を軸にもった WGM のハイブリッド共振器を作製し,半径を制御 して共振波長をチューニングできるようにした研究である.共振器の作製方法は,まずレー ザー加工でLiNbO3ウエハに数 mm の穴を開け,piezo post に接着し,次にスピンドルに装 着して同じレーザーでrimを形づくった後,さらにGrindingとPolishingをして最終的な 形と表面を得る.レーザーは150fsのフェムト秒レーザーを用い,パワーは1W,中心波長 は388 nmで1,2nm単位で合わせ込んでいる(波長が短すぎると表面が溶けすぎて凸凹にな り良くない.)共振器の幅は厚さ250µm,直径数mm に対してわずか100µmであり,Q値 は108程度が得られている.ピエゾ素子に電圧をかけると物理的に共振器のジオメトリーが 変わるので,520nmまわりのSHG光が,28GHzのスパン(FSRを上回るスパン)でモード ホップフリーなチューニングが可能となった.この方法は温度によるチューニングに比べ チューニング速度が速い点で優れている.
CD-8.3 Laser-Active Whispering-Gallery Resonators as Versatile Platform for Optical ThreeWave Mixing (Simon J. Herr, Freiburg Uni.)
CD-7と同名Nonlinearities in resonant structuresのオーラルセッションのこの研究は,た だ一つのウィスパリングギャラリー共振器(WGR)内で,レーザー発振と二次の非線形プロ セスを同時に確認した初めての例である.WGM 微小光共振器は高効率で周波数変換が起 きることから広帯域な光源として注目されてきた.しかし従来の非線形効果発生方法では, 狭線幅かつ波長可変なレーザーを外部から結合させる必要があり,実世界への応用を考え る上では技術的な要求が大きかった.今回実証された方法では,まず線幅が数GHz程度で 狭線幅でない安価な CW レーザー(波長 820nm 程度)をポンプ光として WGR に結合させ る.この時共振器のFSRも数GHzなので,Q値が105程度(線幅 数GHz)のモードに必ず 結合する.この光がNdドープレーザとして狭線幅なモードで発振し(波長1080nm程度), Nd doped LiNbO3共振器で第二次高調波発生が起きる(波長540nm程度).このように,二 次の非線形効果を起こすために必要なポンプ光を,同一共振器内で発振されたレーザーが 担えるため,系が非常に単純化され,高価なレーザーも不要となる.さらに,共振器内で発 生したレーザー光によるものか因果関係は示されていないが,光パラメトリック過程も確 認されており,自己ポンプ型の広帯域な光源の実現が期待されている.
CE-8.6 Second-Harmonic Generation Imaging for Crystal Structure Characterization in IIIV Nanowires (Maria Timofeeva, ETH Zurich.)
こちらはNonlinear opticsと題されたセッションの最後の発表で,田邉研の研究テーマと直 接は関係がないが,興味深かったため取り上げる.本多の発表の裏で小さめの部屋で行なわれていたセッションで,IngoのグループからはKTN という LN等より高い EO効果とカ ー効果を引き起こす材料の層を MgO に生やして常温で実用的な集積可能デバイスに関す る研究を発表していた.今回紹介する研究は,SHGが起こる材料に関して,TEMのように 不可逆的に材料を薄く切るなどの処理をしなくても,結晶構造をイメージングすることの できる方法を実証したものである.試料にはGaAs のナノワイヤを用いており,820nm で 3.5mWのパルス光源を試料全体に当てて二次高調波発生を起こし,410nmの光の強度分布 を電子像倍型CCDカメラで取得する.SHG には偏光依存性があり,これは結晶構造によ って決まっており,それぞれについてχ(2)テンソルが知られている.そこで,パルス光源の 偏光を回して強度分布を極座標的に得ると観察箇所の結晶構造のタイプが決定でき,混合 物だったとしてもその比率を求めることが可能となる.この方法は,真空や超低温にする必 要がなく,スキャンニングも不要で,破壊検査でもないため,光学素子が純結晶構造をもつ か周期的なヘテロ構造を持つか等を検査すること等への応用が期待されている.
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