CLEO 2018 Pacific Rim 鈴木 良

Research

CLEO Pacific Rim 2018 参加報告書

田邉研究室 博士課程 鈴木 良

標題の件につき,下記の通り,ご報告いたします.

1.参加会議

会議: The 13th Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO Pacific Rim 2018)

日程: 2018年7月29日 – 8月3日

場所: Hong Kong Convention and Exhibition Centre, Hong Kong

2.CLEO Pacific Rim 2018について

CLEO Pacific Rimは2年毎にアジア地域で開催されるOpticsやPhotonicsに関連する国際会議であり、中国をはじめとするアジアの大学からの投稿数が多い学会である。本年度は香港で開催され、2年後はオーストラリアのシドニーで開催される。学会に対する個人的な印象としては、invited speakerに著名な研究者が多く招かれていた半面、一般投稿の数はあまり多くなく、いわゆる学生レベルの内容・発表が多かった。報告者の研究内容であるMicrocomb関連のセッションは多くの聴講者が集まっていた。近年はインターネット上で研究結果を共有することが容易になっており、多くの研究は論文やarXivなどで既に知っている内容であった。修士学生が初めて参加する国際学会としてよい学会であったので、2年後のシドニーに向けて現在の学部4年生や3年生は投稿を考えるとよいと思う。

3.報告者の発表について

微小光共振器中のdual-comb発生について、Lugiart-Lefever方程式を用いて得られた計算結果について報告した。これまで報告者は実験を主として研究を行ってきたので、理論のみでの発表は初めてであった。実験結果と違い、細かい内容を発表中に伝えることは困難であるが、内容の大枠を伝えられるよう努めた。今回は口頭発表であったが、理論のみの研究結果であればポスター発表の方が細かなディスカッションが出来るように感じた。本発表の後に、Prof. Stéphane Coenグループの研究者など何人かから好評を得られ、世間的に注目がある内容を研究することが重要であると感じた。

4.関連発表

W2F.2: High-resolution spectroscopy using a tunable dissipative Kerr soliton microcomb

Yong Geng et al., Univ of Electronic Science & Tech China

microcombの研究グループの論文は常に読んでいるが、本研究グループについては本学会で初めて認識した。silicon nitrideリング共振器を用いて、soliton microcomb発生を確認していたが、2つのレーザ(pump and auxiliary lasers)を使用している。soliton microcomb発生時の大きな問題として、熱的に共振器へのポンプレーザの結合が不安定であることが挙げられる。本研究ではauxiliary laserをblue-detuning側へポンプしておくことで、pump laserの結合(red-detuning側)が揺らいだ際の補償を行い、安定的なポンプレーザの結合やsoliton microcomb発生を得ていた。このアイデアはmicrocombの研究者であれば容易に考えられるが(実際に報告者も検討したことがあった)、それを詳細に検討し、実証を行える段階まで持って行くことが出来るかが研究の勝負であると感じた。実際に田邉研究室の過去の例を考えても、microcombの波形整形やcw-ccw伝搬のdual-comb発生、ヒートシンク付きの結晶共振器など、誰でも考えられる初期アイデアまでは得ることが出来ていた。しかし、不足していたのは、実際にどういった現象が起こることが期待され、どのようなパラメータや必要装置があり、最後にどんな結果と利点が得られるかを理詰めで考えることであると感じた。

W2B.4: Efficient four-wave mixing using CMOS-compatible ultra-silicon-rich nitride photonic crystal waveguides

Ezgi Sahin et al., Singapore Univ. of Technology and Design et al

ultra-silicon-rich nitride (Si7N3)という材料を用いて、photonic crystal waveguide中で誘導四光波混合の発生を確認したという内容であった。microcombの研究でよく用いられるsilicon nitrideはSi3N4である。このSi7N3は非線形屈折率2.8×10-13 cm2/W (Si3N4の約10倍)、屈折率3.1、バンドギャップが波長1550 nmで約2.1 eVである。776 µmの導波路長を持つphotonic crystal waveguideにおいて、13 dBmの入力光に対し-37 dBの変換効率が得られていた。

学会の様子
学会発表の様子
学会会場近くから見える香港の夜景
学会会場近くから見える香港の夜景