ALPS2019 田中 脩矢

Research

ALPS2019 参加報告

田邉研究室 修士課程 1 年 田中 脩矢

標題の件につき,下記の通り,ご報告いたします.

1.参加会議

会議: The 8th Advanced Laser and Photon Sources (ALPS2019) 
日程: 2019 年 4 月 22 日‐25 日 
場所: Pacifico Yokohama (Conference center, Exhibition hall), Yokohama, Japan 

2.ALPS2019 について

ALPS は,レーザー学会が主催する国際会議であり,毎年開催の国際学会 OPTICS & PHOTONICS International Congress (OPIC) に属する.レーザをはじめとした光源にまつわる研究成果が多く報告される.OPIC は国内唯一の光関連国際会議であり,開催時期も相まって報告者のような国際学会未経験者が初めに経験を積むことができる貴重な機会である. 開催地が本研究室からアクセスしやすい点も大きい. ポスターセッション会場では産業界主体の超大規模な展示会も併催され,多くの企業がブースを設けて製品や先端技術を紹介している.本会議において報告者はポスター発表であったため,プレゼンが始まる前の時間を利用して十分に見学することができた. マイクロコムはおろか,光周波数コム応用の研究発表が極めて少なかった.国内の光関連学会が主催しているため前者の研究が少ないことは仕方がないといえるが,電気通信大学美濃島研究室のような先進グループがありながら光コムの研究成果発表が少なかったこと意外であった.

3.報告者の発表について

精密機械加工で作製されたフッ化マグネシウム結晶共振器に対する,研磨前後の Q 値と分散の変化に関してポスター発表を行なった.発表形式自体には春季応用物理学会などで経験していたが,英語発表であったため苦戦した.内容を確実に伝えることに注力し,聴講にいらっしゃった方々には概ね理解していただけたようであった. 多かった質問は,「ソリトン化に向けてどの程度までの Q 値向上を目指しているのかというものであった. 単に向上したと示すだけでなく具体的な数値目標を見積もる必要性を痛感した.また,最後に聴講いただいた方に,手研磨だけはいずれ精度や再現性で限界を見ることになりかねないため,アニーリングや高パワーレーザを用いた化学的表面加工を施してはどうかと助言を頂いた.実際にそういった技術を駆使して Q 値を数倍向上させる先行研究はあるため,それらを参照して手研磨だけでなく一歩進んだ加工法を考えることも重要であろう. 聴講には,神成先生や美濃島先生,美濃島研の中島さん,賞審査員の方などが足を運んでくださった.特に美濃島先生と密なディスカッションを行うことができたことは大きな糧となった.また,多くの方のご助力により本会議において学生賞を賜り,報告者にとっては今後の研究活動の大きなモチベーションとなった.

4.その他聴講した発表

  • ALPS-7-01 Miniature chip-based frequency combs: physics and applications

カリフォルニア工科大学 (Caltech) の Kerry J. Vahala 先生による,ソリトンマイクロコムの原理と応用先をレビューする招待講演.概ね昨年末に本研究室主催で開催したシンポジウムにおける講演と同様の内容であった.微小光共振器の概観からマイクロコム発生,およびソリトン形成に至るまでを説明していた.マイクロコムによるシンセサイザ応用を紹介するスライドに,今年に入って報告された論文の中の図が追加されていた.

  • ALPS-P2-24 Tailored generation of a highly-discrete Raman type comb
美濃島研究室からのポスター発表.巨大な容器に満たした水素ガスにおいて,ラマン効果を連鎖的に発生させてコム状のスペクトルを形成し,その一部をピックアップすることでポンプ光から様々な周波数へ変換するという内容であった.非線形光学効果のカスケードというプロセスがマイクロコムに似通っていたため興味深い研究であった.しかしながら実験系のフットプリントが大きすぎるため特に工学応用の関連性は薄いと考えられる.