CLEO-EU 2023 谷川幸彌

Research

CLEO-EU 参加報告

26th June - 30th June, International Congress Center Messe München, munich, Germany

修士 2 年 谷川幸彌

1. 参加会議

会議: 2023 Conference on Lasers and Electro-Optics/Europe – European Quantum
Electronics Virtual Conferences
日程: 2023 年 6 月 26 日 – 2023 年 6 月 30 日
場所: International Congress Center Messe München,ミュンヘン,ドイツ

2. CLEO Europe 2023 について

本会議は幅広い技術分野にわたってレーザ,フォトニクス,光科学における最新の研究開発動向を発表する国際的な会議であり,隔年でヨーロッパ地域において開催されている.私は前年の CLEO Pacific Rim 2022 にも参加したが,北海道で開催されたため海外での国際会議参加はこれが初めてである.コロナによる規制もようやく解除され,会場は活気に満ち溢れていた.特に展示会の規模が非常に大きく,見知れた企業から新たに知った企業まで様々な企業が多種多様な展示を行っていた.また発表も興味を引くような内容が多く,参加する価値のある国際会議であることを実感した.私は初めてヨーロッパに渡航したのだが,ミュンヘンの街並みや食事,現地の人とのコ
ミュニケーションは非常に楽しいものであった.日本と比べてこの時期の気候は大変過ごしやすく,古い建物が点在する街中を散歩するだけで良い気分転換になった.また電車の乗り方や食事の仕方など,日本とは異なる文化に触れることができ良い体験であった.

3. 報告者の発表について

タイトル: Field Demonstration of Multi-Wavelength Optical Transmission with
Microresonator Frequency Combs
発表者: 谷川幸彌
所属: 慶應義塾大学
発表番号: CI-8.3 (Fri. 30th June)

FSR が 20 GHz であるソリトンマイクロコムを発生させ,慶應義塾大学の矢上キャンパスと新川崎タウンキャンパスを結ぶ往復 9 km の商用光ファイバを用いて多波長の大容量光伝送を実証した.共振器にはスペクトル利用効率を高めるフッ化マグネシウム微小光共振器を用い,低遅延・低消費電力の伝送を実現するために強度変調・直接検波方式を採用した.その結果,変調速度 10 Gbps において合計 94 チャネルでエラーフリー動作を観測し,総伝送容量は 0.94 Tbps となることが示された.部屋の大きさはあまり広くなく,最終日の夕方という時間帯もあってかそれほど張り詰めた空気感ではなかった.質疑応答は込み入った質問はなく,なんとか無事に発表を終えることができた

4. 聴講した発表

タイトル: Parametrically-driven cavity solitons in a pure Kerr microresonator
発表者: Miro Erkintalo
所属: University of Auckland, New Zealand
発表番号: EF-2.2

純粋な Kerr 共振器においてパラメトリック駆動キャビティソリトン(PDCS)を最初に実験的に観測したことについての発表だった.パラメトリック駆動とは,外部レーザによる駆動とは対照的に,共振器の 2 次と 3 次の非線形光学効果を用いて光パラメトリック発振によって間接的にソリトンを発生させることである.本研究ではシリコンナイトライド共振器を 2 波長で励起することにより,励起周波数の間に PDCS を発生させることに成功している.これによって従来のソリトンで問題となっている CW のバックグラインドノイズを大幅に減少させることができ,純粋な Kerr 共振器で発生させることができることから製造コストを抑えることができる.


タイトル: Soliton Generation in a Gallium Phosphide Photonic Crystal Cavity
発表者: Alisa Davydova
所属: Swiss Federal Institute of Technology Lausanne (EPFL)
発表番号: EF-2.3

広帯域に分散設計され,かつ非常に高い Q 値を持つガリウムリンフォトニック結晶共振器を実証し,さらにサブハーモニックパルスポンピングによって散逸性 Kerr ソリトン(DKS)を発生させることに成功したという発表だった.ガリウムリンはシリコンナイトライドと比べて高い屈折率と Kerr 非線形性を持つため,広帯域なソリトンコムの形成が実現できていた.EO コムによるパルスポンピングにより熱の影響を低減していた.異常分散を適切に設計することにより 3.0 THz という非常に広い 3 dB 帯域幅を実現していた点も印象的だった.


タイトル: Realization of Multi-Mode Reflector Lasers for Integrated Photonics
発表者: Fwoziah T. Albeladi
所属: Cardiff University, United Kingdom
発表番号: CB-4.5

マルチモード干渉反射鏡(MMIR)の構造を用いた InAs 量子ドットレーザの設計・作製を行い,閾値電流や温度依存性などの特性について検証したという発表だった.シミュレーションにより 80%以上の高い反射率を示し,同じ共振器長のへき開面リッジ導波路レーザと比較して 40%の閾値電流密度を達成することができていた.また MMIR レーザは集積フォトニクス用の小さなフットプリント光源として有望である.