PIERS 2023 菅野凌

Research

PIERS 2023 参加報告

3th July - 6th July, Prague Congress Center, Prague ,Czech Republic

博士課程 菅野凌

1. 参加会議

会議:PhotonIcs and Electromagnetics Research Symposium 2023
日程:2023 年 7 月 3 日~2023 年 7 月 6 日
場所:Prague Congress Center, Prague ,Czech Republic

2. PIERS2023 について

本会議はCzech Technical University in Prague,Zhejiang University,The Electromagnetics Academy at Zhejiang University主催の国際会議である. 浙江大学が主催していることもあり非常にアジア人が多い学会であり,見知った日本人も多く見られた.学会としてはナノフォトニクス以外も量子光学,マイクロ波等セッション内容は多種にわたっており,聞き馴染みのないセッションが多かった.自分野ではInvited speakerが多いこともあり包括的な内容の発表が多く理解の一助となった.

3. 報告者の発表について

タイトル: SiN/Si Hybrid Integration with Edge Couplers by Butt-coupling
発表者:Ryo Sugano
所属:Keio University
発表番号:1P4a(13:30, Mon, July 3rd)

光集積回路は電気回路と同様の手法で製作するCMOS互換性を利用して様々な材料にて研究が行われている.シリコン(Si)は代表的なCMOS互換性を持つ材料であり,PN接合を用いた変調器といったアクティブ素子の集積を行われている.しかし,間接遷移半導体であるため通信波長帯の光源を製作できない上,2光子吸収を持つため効果的な非線形光学効果を発生させることは厳しい.シリコンナイトライド(SiN)はシリコン化合物の一つであり,近年多波長高繰り返しな光源である光周波数コムを効果的に生成できる材料として注目を集めている.これらの材料は導波路の幅および膜厚が異なるそのまま接合したのみでは効果的な伝搬は難しい.よって本研究ではチップ断面での構造を逆テーパ構造にし,バットカプリングしたときの結合効率を計算及び実験的に明らかにした.有限差分時間領域法と固有モード展開法を用いて逆テーパ構造の最適化を行った.導波路の実効屈折率とそれぞれのモードの重なりを意味するモードオーバーラップの双方が重要であることが分かった.製造誤差を考慮しつつ導波路幅を最適化した結果,最大結合効率は96.3%となった.またチップ間の隙間に様々な屈折率整合材料を充填させたときの結合
効率を計算したところ,実効屈折率を考慮したものより,屈折率1.7のものの方が結合効率の低下を防げることが分かった.これは光路長が短くなったためだと考えられる.これらの逆テーパ構造を設計し実際にSiN/Siの接合を行った.粗い手法で算出したところ結合効率は45.9%,屈折率整合材料を充填させることで58.8%となった

4. 聴講した発表

タイトル:Versatile Cavity Solitons for Kerr Frequency Comb Generation
発表者:Xiaoxiao Xue
所属:Tsinghua University
発表番号:1A4(10:30, Mon, July 3rd)

従来のゼロ分散ソリトンとは異なる新しい無分散ナイキストソリトンを生成した研究.散逸性ソリトンは共振器を用いることでチップスケールでの生成が可能なため近年非常に注目集めている.生成される従来のソリトン,ダークパルス(プラティコン)は利得、損失、非線形性、分散を含むいくつかの効果の複合的なバランスによって支えら
れている.本研究では任意のキャビティ分散とフィルタが得られるプログラマブル・スペクトラル・シェイパーとエルビウム利得を組み込んだファイバ・リング共振器を用いて無分散ナイキストソリトンを生成した.無分散ナイキストソリトンはカオス領域を通らず励起できることに加えて,フラットなスペクトルを持ち高変換効率である.


タイトル:Heterogeneously Integrated, On-chip, Lasers with Sub-micron Wavelengths for
Quantum Applications
発表者:Nima Nadar
所属:National Institute of Standards and Technology
発表番号:1P3 (14:45, Mon, July 3rd)

従来の光集積回路に用いられるSi, SiN, LiNbO3の代わりにTa2O5を用いた研究.780nm, 980 nmの量子井戸DFBレーザにミラーとして組み合わせることで量子コンピュータとして応用できる.SiNと比べて熱光学効果が小さい上,応力によるひずみも小さい点で優れている.Ta2O5はUV近く(380 nm~)まで透過でき,かつQ値も6乗まで出ているため様々な応用が可能な魅力的な材料である.


タイトル:Nanowire Photonic Crystal Arrays for Optical Elements in Photonic Integrated
Circuits
発表者:Hans-Peter Wagner
所属:University of Cincinnati
発表番号:1P3(15:05, Mon, July 3rd)

III-V族半導体のInPにてナノワイヤ型のフォトニック結晶レーザを作製した研究.従来のSiナノワイヤ型フォトニック結晶レーザに比べて低閾値である.その高い複屈折性によりマイクロサイズの光素子製作に適しており,偏光変換素子や位相遅延素子として利用を示した.さらに金をコートすることでプラズモニック増幅することができるため,より多様な応用を期待できる.