2次元フォトニック結晶共振器の高速なQ値算出法

Research

2次元フォトニック結晶共振器の高速なQ値算出法

構造の自動最適化を見据えたアルゴリズムの開発

2次元フォトニック結晶(2D-PhC)共振器はシリコンプロセスで作製可能な高Q値の光共振器で,光スイッチやメモリなどの光デバイスへの応用が期待されています.共振器を設計する際には3次元時間領域差分(3D-FDTD)法による電磁界解析で共振波長やQ値の解析を行いますが,計算資源を多く消費することが知られております.本研究は特に計算に時間がかかるQ値算出をより高速に取得を可能とするアルゴリズムの開発を行いました.

2D-PhC共振器はスラブに対して垂直方向へは全反射によって光を閉じ込めているため,共振器モードの光の内全反射成分を満たすことができない光はスラブ外へ放射してしまい,共振器のQ値を制限してしまいます.2次元モード分布(図.1(a))を空間フーリエ変換した波数空間(図.1(b))において|k⊥|<ω0/c (k⊥は面内波数,ω0は共振角周波数)となる全反射条件を満たさない波数領域はライトコーン(LC)と呼ばれており,我々が今回提案する手法では,LC内の波数成分ごとにフレネル反射率と単位時間当たりの反射回数を求めることでQ値を算出することができます.

図1:(a)2次元モード分布.(b)波数分布.

L3共振器を対象にこのアルゴリズムを適用させQ値の算出を行いました.構造は図2のようにしました.空孔間隔は420 nm,空孔半径は115.5 nm,スラブ厚は210 nmで,共振器脇の空孔は32 nmだけ外側にシフトさせ,空孔半径は63 nmとしました.この構造での共振波長は1572 nmでした.計算領域中のエネルギーの減衰から求める従来の方法と本アルゴリズムによるQ値は図3のようになりました.本手法で算出する際,励振後0 s, 250 fs及び1 ps経った時点でのモード分布を使用しました.層数Rは共振器部と計算領域との間にある空孔列の数を指します.図3より,計算領域を削減しても光源終了直後のデータのみで正確にQ値が得られることがわかりました.同様の結果はQ > 107の幅変化型共振器でも得られました.

図2:L3共振器の構造.    図3:層数とQ値の関係.

本アルゴリズムにより計算領域と計算ステップの両方を大幅に削減できることが示され,最大で計算時間を94%も短縮することができました.今後は本手法を用いた2D-PhC共振器の高Q値化のための自動最適化を目指していきます.

本成果はNTT物性科学基礎研究所との共同研究によるものです. 成果はOptics Express Vol. 22 No. 19 pp. 23349-23359 (2014)に掲載されます.